SYMPOSIUM
質問タイム3年ぶりに
会場で語り合う
会場の参加者から4つの質問がありました。どんな話題が展開したのか、ご覧ください。
Q1
素人の私が写真集を見て思う、多様性についての質問です。
例えば、ブラジルのアマゾンは、川の傍に同じような木がたくさん並んでいるように
見えます。一方で、日本やインドネシアの里山は、水田があり、姿形が異なるさまざまな
種類の木があるように見えます。
アマゾンの森と、日本やインドネシアの里山では、多様性はどのくらい違うのでしょうか?
今森
アマゾンの樹木はものすごく多様です。そして高さがあります。空間的な高低差が日本の森とは比較になりません。里山より、熱帯雨林は大きい歯車で回っているので、一つ歯車が壊れると再生が難しい。日本の雑木林のような人工森は、ごく小さな歯車で、代わりとなる歯車がいくつもあるので、一つ壊れても再生しやすいです。自然の循環の規模が全く違う感じがします。
永田
私はキノコ刈りが好きでよく山に入ります。日本は同じ地域にいろいろなキノコが生えていますが、ヨーロッパでは一種類のキノコにしか出会えませんでした。日本は、本当に微に入り細に入り、非常に狭いところに非常に複雑なものが詰まっている感じがしますね。
Q2
切り絵作家の今森さんの姿をテレビで拝見しました。
里山を扱う今森さん、写真家の今森さんのルーツは昆虫少年の時代に
あったと思いますが、切り絵はご自身の中でどのような位置づけですか?
今森
切り絵作家としてのモチベーションも、やはり多様性です。子どもの時からの感動を表現したいという思いです。切り絵は形が重視されるので、擬態昆虫などは、写真よりも切り絵の方がはっきりと分かります。私は小さい頃から、とにかくたくさん生きものを触っていました。触ることはデッサンなんです。描くだけではなく触ること。これが切り絵に活きていると思います。
質問者
特に小さい子どもは、描くことより触ることでイマジネーションをかき立てるようですが、それをどんどん広げたイメージですね。
永田
触ることは大事なコンセプトですね。先日、博物館で話をした時に「世界はさわらないとわからない」という講演をされた方がいました。触るという行為が、現代人の中で欠落しているのかもしれません。視覚文化になってしまって、目で見たら理解できると思っちゃうんですよね。
Q3
「ダマシ」や「モドキ」が付いた昆虫の名前がありますが、
これは1つの種類なのか、全体を指す名称なのでしょうか?
今森
そういう和名が付いた種だと思います。ダマシやモドキが付く名前はたくさんありますね。ある法則性のもと、命名した人のセンスで付けているんじゃないでしょうか。
永田
モドキなんて付いたらかわいそうですね(笑)。ナナフシモドキとかゴミムシダマシとか、好きなように名前を付けている(笑)。
今森
私はモドキが好きで、かっこいいなと思います(笑)。
Q4
小学校の子どもたちとフジバカマを植えて、アサギマダラの飛来を待っています。
生態についてみんなで探っているところです。
2000キロを飛ぶ中で、どのように世代交代をするのかなど教えていただきです。
今森
アサギマダラは移動するチョウなので、居る場所に幼虫の食草がない場合がほとんどです。私のアトリエの庭にも食草はありませんが、アサギマダラは台湾からよく飛んで来てくれます。同じチョウに見えても、次の日には違うチョウが飛んで来る。番号でも書かない限り、同じチョウか分かりません。今の時期、秋は絶えず北に移動して、また南の方に帰りますね。九州にはアサギマダラの食草がたくさんあり、幼虫が育つ有名な場所があります。生態については、本やインターネットにさまざまな情報があるので、調べてみてください。