その他
2024.05.24
AGIと競争と戦争
いし
先日ソフトバンクの孫さんが、10年以内に人類の英知の総和の10倍の知能を持つAGI(汎用人工知能)ができ、20年後には10000倍になる、と言っている動画を見ました。仮にそれが本当なら、AGIを何とかコントロールする方法、AGIを使った戦争を回避する方法を見つけないと、人類は今よりずっと深刻な危機に陥りそうな気がします。
コントロールする方法は見当もつきませんが、戦争は競争(自分より良い状態の他者を許せない)から来るのかもしれないと思い、そうであれば中村先生のように自分と仲間を囲む線をなるべく外側に設定することは素晴らしい考えだと思います。実際それをどう実現するかは大きな課題ですが、個人レベルでは、できる限り広い範囲を自分に関連付けて考えること、競争以外のどんな目的を見つけるかが大事になるような気がします。
2024.05.30
1. 中村桂子(名誉館長)
いし様
大事なご指摘ですね。ありがとうございます。
次の「ちょっと一言」でご意見に基づいた私の考えを書きますのでお読み下さってまたご意見をお寄せください。
中村桂子
2024.06.18
2. いし
中村先生
「ちょっと一言」で書き込みに触れていただき、大変ありがとうございました。文字通り拝読いたしました。
学問の道に進まなかった私には、「人類の叡智」の本質はわかりませんが、ここで先生がおっしゃっているのは、(自分にとって、仲間にとって、人類にとって)何が重要なのか見極める力ということかなという気がします。
宗教を信じない人が多数派であろうこの世界で、善悪の基準を見失い、競争に負ける恐怖から競争を最優先にしてしまうことが問題なのかとも思います。
意識が生まれる仕組みを知らない人類が、意識を持ったAGIを創り出すのは無理なのではとも思いますが、AIが答えを導くプロセスにブラックボックスがあること、AGIは(「クララとお日さま」のクララとは違い)自ら目標を設定できることを目指しているらしいこと、開発の最先端に近い人たちがコントロール不能になる可能性を述べているらしいこと等が不気味なところです。
もう一つ不気味な点は、生成AIにより顕在化してきたように、AIが偽物を生成することにより、人間が持っている、何かを人に伝えたい気持ち、共有する喜びを阻害してしまう可能性です。
既に部分的には始まっているかもしれませんが、単純にある部分を禁止することも含め、どうすればAIをコントロールできるかを、開発よりむしろ優先して国際的に協力して進める必要があると思います。
偉そうなことを書いてしまいましたが、こちらのHPも先日知ったばかりなので、これから勉強させていただければと思います。先生のご著書も少しずつですが読ませていただきます。
2024.06.18
3. どんぐり
中村先生
いしさん
AGIと戦争兵器との関連ついて大変勉強になりました
このボーダレスな時代に競争という言葉も強く響いてきます。
絶え間ない争いが存在する中で性別や人種、障害をこえてボーダレスな時代に果たして環境リスクの高いオリンピックは必要なのだろうかとやはり考えてしまう自分がおりました。
先日、アートトリエンナーレで最後にベルギーの写真家の大きな今のパリを写し出した大判の作品が飾られていました。パリから排除される人々の生活しているだろうテント群の写真です、写真家は是非今回の展示にこの状況を見てもらいたかったと書いてありました。オリンピックが決定した時や3年前のアレはなんだったのだろう…(税金の無駄遣い)経験している者として
パリでのオリンピックが近づいていますがやはり時代に見合わない祭典だと感じる海外記事も多く目にします。
競争することは未来にいささか不釣り合いに感じます。
学び考えるきっかけと場に感謝して♡
2024.06.18
4. 中村桂子(名誉館長)
どんぐり様
パリオリンピックは、既存の施設を上手に使うということで、東京オリンピックへの疑問を投げかけているところに興味がありますが、おっしゃる通り国の威信をかけての大型イヴェントは20世紀のものですね。スポーツも経済の対象としての見方が大きくなっていますし。
今、宮脇昭先生の「鎮守の森」の解説をかいているのですが、その土地本来の森が出来上がるまでの、競争と共生の様子が興味深いのです。土地に合った樹種であれば、ある程度の競争がありながらそれぞれが上手に生きていきます。人間も、風土に合った生き方があるのでしょう。一律の競争は本当の競争ではないのではないかと思えてきました。
中村桂子
2024.06.19
5. いし
中村先生
どんぐり様
聞きかじりの知識でAGIについて書き込みをしてしまいましたが、不要な不安を読む人に与える面もあったかもと今更ながら反省するところもあり、気を付けたいと思っております。少なくとも現実の自然を起点とする自然科学に対しては、AGIでは手が届かないかもしれません。
中村先生の「生命誌とは何か」と「ウィルスは「動く遺伝子」」を初めて拝読いたしました。古代から19世紀、現代に至る生物学の劇的な展開、さらにはウィルスがゲノムに与える影響等、知らないことだらけでしたが、平易な言葉でご説明いただいて、興味深く流れは追っていくことができたと思います。
別な分野ですが、2019年に公開されたEHTによるブラックホールの姿に感動したことを思い出しました。人類にとっての3大難問は、宇宙がどう生まれたか、生命がどう生まれたか、意識はどう生まれるのか、ということかと勝手に思っておりますが、このような難問についての探求は、人間が生きる目的になると思います。中村先生の生命誌も、生命の起源につながるだけでなく、意識についてもつながって行きそうなところが印象的でした。
どんぐりさんにもコメントで触れていただき、大変ありがとうございました。私自身は競争は苦手な方ですが、オリンピックについては一観客として楽しみにしているという程度でした。そのような見方もあるのですね。
科学的な真理の探究や、例えばワクチンのような利用目的について誰も異論のないような技術の追及については、競争があってもいいような気がしますが、立場によって目的が異なるような技術の競争は、時として危険につながるということかと思います。
2024.06.19
6. 中村桂子(名誉館長)
いし様
「生命誌とは何か」と「ウイルスは動く遺伝子」をお読みくださったとのことありがとうございます。共に、生きものという切り口で見えてくる世界を描きましたので、今の社会のありようを見直すヒントを得ていただけると有難く思います。
生きものは、「協力的な枠組みの中で競争をしている」のです。競争と協力は矛盾すると考えるのが現代社会ですが、生物の世界は矛盾を抱えながら上手に続いていくという選択をします。動物の群れの中での優位争いも、群れの協調の中で行われています。スポーツは本来そのようなものですね。
中村桂子
2024.06.20
7. いし
中村先生
コメントいただき、ありがとうございました。
ご著書の中で今の社会につながっていく部分は、読者に対する宿題にもなっているかと思いますので、安易に答えを出さず、よく考えていきたいと思います。
また何か感じるところがあれば、書き込ませていただきたいと思います。
ありがとうございました。