生命誌について
2023.08.07
これから20年先のビジョン
こう
32年前の“研究館”の創作につき
岡田・大澤両先生と考えた話、ありがとうございます。
私は、明解な裏のある話はできませんので
著名な方の話を引用させて頂きますと
京大・山中伸弥先生は、恩師・マーレー先生から
人生の指針として“vision and work hard”を教わったと
話されています。
“研究館”の創立にあたり、三人が長期的な目標を立て
スタッフの皆様と懸命に努力されて、今の研究館の強固な
土台と活発な運営があるのですね。
さて、次は50周年。
この30年で世の中が変わって来ました。特にと言えば
1980年生まれ(今年43才・丸めて50才)から始まる
デジタル世代が世の中核となってきたことでしょう。
30年たった今は、これまでの実績や世の変化から
見えてきた課題をチェックし、アクション・ビジョンに
絵心を燃やす時です。
幸いスタッフの皆様は、若い方が多数おられますので
同世代の属性や研究館の使命を話し合い、構想を作り
ボトムアップすることは大いに意味があると思います。
ここで、故・稲盛和夫氏を思い出します。氏は
品物を生み広めてゆく各ステージの大切な心の持ち方は
構想・企画は楽観的(プラス思考)に、設計・生産は悲観的
(マイナス思考)に、販売(啓蒙・教育)は楽観的(プラス思考)
にと話されています。
このうち“構想~楽観的に”が意外とむずかしい。
特に、現場・現業で経験豊富な方々は、視界を拡げられない、
視点に偏りがある、頭に制約条件があるなどで
新鮮なアイデアを出せないことがよくあります。
そこで、外野席から恐縮ですが
若い方や現幹部とのブレインストーミングの機会があれば
同じ目線でこれからを懇談されるのはいかがでしょう。
失敗やボツにした案なども含め
創業者の多面・多彩なお話は、頭がほぐれますから。
2023.08.08
1. 中村桂子(名誉館長)
こうさま
30年についてのご意見ありがとうございます。おっしゃる通りで生命誌という新しい知はこの30年の間に研究館に関わった人の力でできてきました。最初に岡田・大沢先生とのドラマがあり、それがなかったら「生命誌」も「研究館」もなかったでしょう。それは事実ですが、その後の活動は、もちろん若い人たちの思いと働きとが加わって出来上がったものです。
皆で考え、皆でつくる。研究館ではそれが当たり前でした。時には、思うようにならずに涙を流す人もいましたが、それは皆で新しいものを創るために必要な涙であり、前を向いたものでした。原則フラット。組織を動かすにはそれなりの役割がありますが、それはあくまでも役割です。
どこかに権力があると面白いことはできません。岡田先生、大澤先生も権威は持ちながらフラットでいて下さいましたし、若い人たちは先生を尊敬しながら自由でいました。
「ここの空気はいいですね。」それが私にとって一番嬉しい言葉です。幸い、多くの方がその言葉を聞かせて下さいました。フラットでオープン。爽やかな空気の流れる生命誌研究館を続けることを忘れないで欲しい、そしてそれを発信して欲しいとと館員のみんなに改めて伝えたいと、メールを拝読して思いました。
生命誌は今、これまで以上に社会から求められていることを感じる毎日ですので。
中村桂子