生命誌について
2023.05.04
つながり
T. S
「生命誌研究館」の6文字は、すべての人の生きることと重なる知を求めて生まれたものであり、一つの「知」ではあるけれど特定の学問ではない。まさにこれまで欠落していた学問の視点であり、先見的な方向性だと思います。
私は凡庸な元工学研究者です。いま散り散りに細分化し深化をつづける科学技術の姿を困惑しながら眺めています。「社会のための科学とは何か」を考えるとき専門知のつながりが大切と思います。生命誌研究の方向性はまさにつながりをつけることにあるのだなと思いながら、いつも興味深く拝見させていただいております。
2023.05.04
1. 中村桂子(名誉館長)
T. S 様
コメントありがとうございます。現役を終えた年齢の理系の仲間が共通して持っている気持ちではないかと思っています。次の世代のためによかれと思ってやってきたことが、なんだかおかしなことになってきて戸惑う気持です。いろいろ考えますが、私の場合生きものを見ることが基本にありますので、そこから考え直しています。すると、みんな生きものなのだから、みんなで考えるのが一番ではないかと思えるのです。
尊敬するお仲間の一人である建築家の伊東豊雄さんが「身体の奥底に潜在している自身の心からの思いを表現すること、それが私が志す建築だ」とおっしゃっています。全く同じで、私の場合、それが生命誌です。このようにみんながつながる底に、生きものという感覚があるのではないでしょうか。
中村桂子