研究
2022.06.02
偶然とある飼育環境とは?
アマミナナフシ
プラナリアの飼育環境を変えてみたところ、自切せず1.5cm
に育っていたものが、もっとも大きい個体で伸びたときに3~4cmに成長したとのこと。
1.とある飼育環境とはどんな所ですか?
2.そこは今までの常識では考えられないところですか?
3.今回の文面では『偶然』という言葉が2度使われています。研究される時『偶然の発見』の方が『予測通りの発見』多いのですか?
このまま問題なくプラナリアがすくすく成長し滞りなく研究が進捗する事を祈っております。
2022.06.02
1. 橋本主税(形態形成研究室)
ご質問ありがとうございます。
Q.とある飼育環境とはどんな所ですか?
A. 企業秘密とさせてください。
Q.そこは今までの常識では考えられないところですか?
A. 「一般常識」を判断できないのですが、私たちにとったらあり得ない環境になると思います。水の素性も温度もエサも、それ以外の要因もまったく違います。だから、これまでの飼育条件を部分的に変更したというのではなく、完全に異質の環境に置いたら大きく育つようになったということです。大きくなったら自切すると一般に考えられるので、自切が抑制される環境ということになりそうですが、長さと同様に横幅と厚みも大きくなってたくましく育っていますので、より成長させる(太らせる)環境でもあるようです。どの環境要因が自切の抑制や成長促進に影響するのか科学的に調べたら面白いかもしれませんが、いまはとにかく実験に使用できるように大きく育ってもらうことに全精力を傾けています。
Q.今回の文面では『偶然』という言葉が2度使われています。研究される時『偶然の発見』の方が『予測通りの発見』多いのですか?
A. これは「発見」という言葉の定義の問題にも関係するように思います。個人的な感覚では、「予想通りの結果」が出た時に「発見」という表現は使わないように感じます。だから「発見」とは、予想外の結果が出た時に用いる言葉と考えられそうです。ちなみに「大発見」とは常識を覆す「発見」と考えられますが、そのためには「嘘」が常識として世間一般に広まっている必要があります。なので、意図的に大発見をしようとするなら、まず最初に嘘を世間に広めてから、「実はそうではなかった」とするしかないでしょうね。さて、ご質問に戻ると、私たちは仮説を立ててその検証実験を行ないます。そして仮説(期待)通りの結果が出るかどうかはその時しだいという気がしますが、ある程度見当がついている実験の場合には「予想通り」の結果が出ることが多いでしょう。それに対して、「偶然」とはその定義からしても起こりうる確率はかなり低いことが期待されますので、「予想通りの発見」の方が圧倒的に多いと思います。
理屈はわかりませんが、プラナリアを大きく育てる方法が見えてきましたので、実験に耐えられる数のプラナリアを得るために現在は頑張って飼育を続けています。もう半年以上のあいだ実験が止まっていますので、なんとか夏ごろには再開できるよう期待しています。