研究
2021.03.17
単細胞から複細胞化への変化
decoちゃん
生命の誕生期には、ほとんどが単細胞の生命体であったと本で学んだことを思い出しました。今私たちが見る自然界の生命体は、複細胞を持つ生命体がほとんどと思います。その生命が変化する時間は、その時の環境によるものと考えられますが、その変化することへの指令は、どのようなところから考えられるでしょうか?
蝶についても、好きな花や嫌いな花があるように、38億年に遡って流れるDNAによるものでしょうか?
自然の中を散歩して、蝶も私も誕生は同じなのだと思うと、楽しくとも不思議な感じになります。
2021.03.17
1. 齊藤わか(表現を通して生きものを考えるセクター)
ありがとうございます。チョウも私も、祖先を同じくするものどうしと思うと不思議だというお気持ち、生命誌で考えていることと通じていて嬉しく思います。
地球上で一番種数が多いのは昆虫、次が植物とされていますが、目に見えない単細胞生物も実は多様であることがわかってきており、ゲノム解析や探索技術が進歩した近年では、深海、氷山などにこれまで知られていなかった単細胞生物が見つかってきています。「単細胞」は、これまで考えられてきたほどマイナーな生き方ではないのかもしれません!よろしければ細胞の進化についての特集記事もご覧ください。
https://www.brh.co.jp/publication/journal/104/rp/
多細胞化は真核生物の動物、植物、菌類のグループで独立に何度も起こっています。これまでと異なる生きものが進化してくるとき、まず突然変異などの遺伝子の変化によって、元と性質の異なる個体がうまれ、それが環境によって選択されます(自然選択)。環境が変わればこれまで残らなかった個体が残る可能性が高まるので、おっしゃるように環境は重要です。ただ、環境に合わせて遺伝子が変化するのではなく、さまざまな遺伝子をもった個体が環境によって選択されるという順番のようです。
さて、多細胞化の過程をよく見せてくれる生きものとして、ボルボックスの仲間をご紹介します。ボルボックス目のゲノム解析から、細胞周期を制御する遺伝子が、多細胞化の初期に変化したことがわかったそうです。つまり元々単細胞だったものが、遺伝子の変異によって短時間に細胞分裂をくり返すようになり、複数の細胞がゆるやかに集まった状態となったことが、このグループの多細胞化の始まりかもしれません。よろしければ記事をご覧ください。
https://www.brh.co.jp/publication/journal/092/research/1.html
チョウがどんな葉や花を選ぶかについては遺伝子に組み込まれた部分も大きいのですが、アゲハチョウは自身の経験から特定の花の色を覚えるといったこともできるようです!彼らがどんな世界を見ているのか、味覚や嗅覚、視覚などから迫る研究を、今後、季刊「生命誌」で紹介したいと考えています。よろしくお願いいたします!