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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【織りもの】

2015年5月1日

藤井 文彦

今年の年間テーマは「紡ぐ」ですが、紡がれた糸を経(たて)と緯(よこ)に組むと様々な織りものができあがります。例えばあらかじめ染め分けた糸を織ると、ズレによって生れる独特の美しさをもった絣(かすり)ができあがります。

先月の桜が咲いていたころ、生命誌研究館の入口付近にも1つの織りものが掛かりました。原図になった「生命誌マンダラ」は、前年に立版古(たてばんこ)として立ち上がり動画にもなりましたが、今年は織りものになって「生命誌絵巻」「新・生命誌絵巻」と仲良く並びました。


写真:大西成明

その前に立った人は、もう一歩進んで目を凝らしてください。経には白黒2種類からなる7,200本の糸が、緯には白黒に加えて青・緑・黄・赤からなる約18,000本の糸が織られています。それが交叉してできる織物組織点は、なんと約1億3千万個。織りもの全体が130cm四方ですから、1cm四方あたり約8,000個もの点になります。少し離れて眺めると、複眼を16,700個も持っていたらしいアノマロカリスも空間分解できないほどの細かさです。

中村館長の創案から始まったこの「生命誌マンダラ」は、表現セクターで具体的な情報を与え、それをもとに僧侶兼イラストレーターの中川さんがパーツを描いてくださいました。そして、鷺草デザインの尾崎さんが全体調整を行い、京都美術工芸所(住江株式会社)さんが織り、文園さんが用意して下さったシックな額縁に納まったのです。これら違った視点と技術をもった人が関わる作業も、まさに違った色の糸を織りあげていく行程と似ていますね。

ところで生きものを始めとした自然も、見事な織りものと見なすことができるでしょう。スケールの違うミクロとマクロの自然を、経(たて)につなぐ数理科学が統計力学。非生物と生物など一見異なる原理ではたらく自然を、緯(よこ)につなぐのが非線形科学と言われています。初夏にはこういったお話もご紹介しますので、是非ご期待ください。

[ 藤井 文彦 ]

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