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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【生物を一緒に楽しく考えよう】

2014年9月16日

森光平

はじめまして。今年9月から展示ガイドスタッフとして研修中の森光平です。学生として大学の研究室に所属しており、普段は微生物がもっているトランスグルタミナーゼというタンパク質のX線結晶構造解析という研究をしています。トランスグルタミナーゼはタンパク質どうし、また細胞どうしを結合する、いわゆる接着剤のような機能をもって酵素タンパク質です。ヒトも微生物もこのタンパク質をもっており、例えば、ヒトのものでは、けがをしたときに血液内の成分どうしを結合させて、かさぶたを作ったりしています。微生物のものはまだ生理的意義はよくわかっていませんが、このタンパク質どうし、細胞どうしを結合させる機能が注目され、食品や医薬品などの幅広い産業で利用されています。例えば、かまぼこや麺類の食感改善の利用や、大きさの規格の合わなくなった小さいお肉どうしに作用させることでサイコロステーキの作製などです。タンパク質の構造研究に興味をもったのは機能の原理やその機能の改善方法を構造から考えるのが面白そうだったからです。構造をみるためにX線を用いているのは、タンパク質が1ナノメートルというすごく小さい大きさなので、顕微鏡ではもはや細かいところまでは見えないことから、それを見るために目的タンパク質の結晶をつくってX線を照射させると、X線の回折という現象が生じ、それをコンピュータで解析すると見ることができるので、そのような方法を利用しています。

上記のような微生物のタンパク質に関連した研究をしているのですが、僕はもともと微生物に強い関心があったわけではありません。実は、僕は人間の生理現象を学びたいと思っており、本来、大学受験の時に進路を「医学」とすべきだったのですが、ぼんやりしていたので、漠然と、「生物」と思って微生物の方面にきてしまいました。しかし最初から人間に絞らず、広く生命現象を考える環境に身をおいたおかげで視野も広がり、「生物研究はかなりわかってきたようで実は今でもまだまだわからないことだらけだな」と一人前に考えるようになり、日々、生物研究の奥深さを感じています。でもわからないことがあるからこそ、生物研究は楽しいのかなと思ったりもします。

さて話はかわって、まだガイド未経験の僕ですが、BRHの好きなところがあります。それは「生物研究の成果を研究者たちだけで共有するのではなく、研究と関係のない一般の人にも、音楽を楽しむように親しみ、考えてもらおう」というBRHのコンセプトです。例えば、iPS細胞のような専門性の高い研究を、平易に説明することはなかなか容易でありませんが、BRHでは最先端の研究成果がわかりやすく、しかも、可愛らしく表現されています。生物が好きという方はもちろん、生物の興味ないとか、興味はあっても勉強が苦手という方に対しても、楽しく生物の世界に入っていけるのではないかなと思います。なので、皆さん、ぜひ一度BRHに遊びに来てください。生きものの大きなところから小さなところまで、歴史と神秘さと科学の面白さをのぞけるような気がします。

大学の授業や研究室での仕事が忙しく、僕が実際に来館者の皆さんに展示ガイドをさせて頂く日は、もう少し先になりそうですが、一日でも早く、皆さんとお会いできるのを楽しみしています。どうぞこれからよろしくお願いします。

[ 森 光平 ]

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