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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【愛づる展に向けて】

浦川哲生  あっというまに年の頭が過ぎ、気付けばもう2月ですね。新年の抱負は一月半で薄らいでしまうので、今一度、正月に何を言ったかなあと思い返しています。
 最近は、愛づる展示に向けた準備に追われています。この展示は平安文学を題材にした展示で、物語に沿って生命誌を展開していくのです。基本になるのが平安時代の物語なので、原典ではどうなっているのかと古い版から新しい版まで比べてみます。すると、解説されている研究者の方がそれぞれ違い、皆が異なる解釈をつけているのですね。普通に物語として読むときは流してしまうような違いでも、表現をするときにはかなり大きな違いになってきます。生命誌では生きものと時間を掛けて向き合うことが何より大切なテーマと考えているので、その観点から最も良いと思われる解釈を採り、さらに生命誌のメッセージを重ねて、物語の骨組みを組んでいます。
 展示を作るときは、部分と全体の両方にいつも気を配るようにしていますが、三歩進んでは二歩下がりの繰り返しなので、時間がかかってしまいます。視野が狭まって部分だけを見ながら作業を進めると、見直したとき要素同士のバランスがしっくりこない風になっていますし、逆に全体だけ見て部品を整えていくと、いつのまにか細かい内容が削ぎ落とされたり、流れが繋がらなくなってしまうので難しいですね。学生の頃に読んでいた表現についての評論では、耳にタコができるくらい繰り返して部分と全体という考え方の大切さを説かれていましたが、それを今、身をもって実感しています。芸術と科学が同じものを見ている、ということはまだ私には言えませんが、しかし、控えめに言っても、表現と研究の背景にはなにがしかの同じものがあるような感じがしていて、それを展示という形にすることにやり甲斐を感じながら日々仕事をしています。展示は3月にはできあがります。楽しみにお待ち下さい。

[浦川哲生]

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