1. トップ
  2. 語り合う
  3. 【よろしくお願いします】

表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

バックナンバー

【よろしくお願いします】

浦川哲生 皆さんはじめまして。この4月から表現セクターのメンバーに加わった浦川哲生です。まだまだ分からないこと出来ないことも多いのですが、スタッフの方々からひとつひとつ仕事を教わり、盗みながら、「表現を通して生きものを考える」ことを実感し始めています。
 私は大学院でバクテリアの細胞壁脂質を研究していました。生命科学の話をする相手は同じ教えを受けた仲間たちや、長年その世界にいらっしゃる先生がたに限られていました。私の場合、「何のために多様性があるの?」「どうしてDNAが大切なの?」といった、内実とても大切にしている価値観を持っていても、専門家同士の集まりの内で話すときには暗黙の了解という形で扱うことが多かったように思います。また、効率よく実験をしても1日の時間はいくらあっても足りないため、研究者同士で話すときにはどうしても省略してしまうのです。
 生命誌研究館の一員となって、来館者の方々の声を聞き、今までに蓄積された館のアーカイブをじっくりと見ていきますと、この場所で大切にしようとしていること、あるいは広く一般の方々から求められているのは、専門家達が日常で省略していたまさにその部分、「どうして?」「何のために?」という素朴な問いを受けとめて一緒に考えていくことではないかなと思うようになりました。日常の中で生まれた疑問を入り口にすれば、「生きものってなんだろう」と一緒に考えていけるのではないかと思っています。
 先日、初めて展示ガイドをさせて頂きました。研究館の向かいにきれいな桜並木があり、その桜の観賞会にいらっしゃった方々と館内を巡ったのですが、緊張し通しで思っていることの半分も伝えられたか分かりません。次の機会にはもっと頭の中を整理してガイドできるようがんばります。生きものの「どうして?」に向かい、一緒に考えていきたいという思いは誰にも負けないつもりです。これからよろしくお願いします。

 [ 浦川哲生 ]

表現スタッフ日記最新号へ