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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【高槻点景】

吉川徹朗
 いま、研究館の4階にある食草園では、ミカンの葉の上でナミアゲハの幼虫がすくすくと成長中です。小さいのから大きいのまで、いろいろなのが揃っています。この幼虫たちは外から飛んできた親が産んだ卵から育ったものだと伝えると、食草園を訪れた方はみなさん驚きます。さまざまなチョウが小さな食草園を訪れてくれることは、かれらの探知能力の凄さを表しているとともに、高槻にも豊かな自然が残されている証拠でもあるでしょう。
 きょうは、そんな高槻の自然の一断片をご紹介したいと思います。研究館から西に10分ほど歩くと、景色が開けて芥川に架かる橋に辿り着きます。気持ちのよい風景です。川岸は護岸されていますが、ゆるやかに段々になっていて水辺まで降りていけるところもあります。中州に茂る叢の緑も色濃く、どこかしら生きもののひそんでいる気配を感じさせます。土手を登ると、車道との際のわずかな斜面にはアキニレやムクノキ、エノキなどの木立が点々と残っていて(どれもニレ科の、川沿いの土地を好む樹木です)、以前広がっていたであろう河畔林の面影をわずかに残しているようです。ニレの仲間の樹木には、なぜか爽やかさを感じさせる佇まいがあって、木陰で水遊びをする子供たちの姿もどこか涼しげに見えます。これからの季節には、エノキの梢にゴマダラチョウの影もあるかもしれません(食草園まではなかなか来てくれないでしょうが)。
 この木立は、自然というには僅かなものです。けれども、そういったものが残されているかによって街のもつ風貌は大きく変わるでしょう。大切にしたい風景です。

 [ 吉川徹朗 ]

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