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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【一度ひいて見る】

板橋涼子
 ここ二週間近く、私は季刊誌(リサーチ)の編集にどっぷり浸かっています。著者からいただいた原稿の編集がある程度進むと、BRHカードの制作に入ります。原稿にあるエッセンスを抜き出し、14cm四方の紙面を十分に生かした表現をしたいのですが、ずっと同じ記事を編集していると、その内容に入りこんでしまうことがままあります。著者の研究結果をカードの表と裏できっちり正確にはめこむことばかりに気をとられると、やたら説明的なものになってしまいます。そのような状態では、一番伝えたい「研究の臨場感」や「研究者の思い」が抜け落ちてしまうものです。例えば、あれもこれも研究結果を載せると、原稿の要約にはなりますが、どこに注目してよいのか分からない構成になり、カードで表現する意味がなくなってしまいます。自分の頭の中では、「これを一番強く伝えたい」「この結果はそれほど重要ではないかな」といろいろ考えていますが、いざその通りに紙面上で表現するには勇気がいりますし、本当に難しいです。
 そんな時は、一度ひいて見てみることにしています。一番大切なのは、周りの意見を聞くこと。いろいろなアドバイスを自分の中でうまく消化して、少しずつ良い形へバージョンアップさせていきます。日を改めて自分の案をみることも大事。「この案はとても良いのでは!?」と思っても、次の日には「あれ?ここはおかしいぞ」と気づく場合が結構あります。
 次回(54号)のリサーチで、内容にどっぷり入りこんでしまった私は、自分の案を客観視できずに、かなり苦戦をしています(数理生物学の研究です。乞うご期待!)。「何も知らない人の立場になって考えてみなさい」と中村館長はおっしゃいます。「自分はこれを伝えたい」という軸がぶれないことはもちろん大切ですが、決して一人よがりな表現にならぬように、常に客観的な視点を持って仕事を進めていきたいと思います。
 BRHカードの入稿まで残り二週間を切りました。あと一踏ん張りです。


 [ 板橋涼子 ]

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