展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【つながりについて考える】
私の祖母は大正2年生まれ。第二次世界大戦と伊勢湾台風を生き抜いたとても強い女性です。祖母の若い頃の話の中で一番おもしろかったものを一つ紹介します。時は太平洋戦争の真最中。白昼に空襲警報が鳴り響き、急いで祖母は防空壕に避難しました。警報が解除されて家に戻ってきたらなんだかとてもおいしそうな匂いが。なんと庭先のかごに入っていたさつま芋がいい頃加減に焼けていたそうです。そしてその焼き芋をおいしくいただいたとか。大変な戦争の中、なかなかない笑い話と思いませんか? さて話は戻ります。祖母が亡くなった後、私の母親が「もう少し、ばあちゃ ん(祖母)に昔のいろいろな話を聞いておけばよかった」と言っていました。私は「確かに」と思いました。私たちは常に未来を意識して生きています。「今日は何をしよう?明日は何をしよう?3年後はどうなっているのだろう?」それでは過去のことはどうでしょうか。仲間と思い出の話に華を咲かせることはあっても、自分の生まれていない昔のことを人に聞くことはあまりないでしょう。しかし自分が今ここで何不自由なく生命誌研究館で働いていることは、私の祖母が(もちろん祖父も)、昭和の時代を一所懸命に生きていてく れたからなのです。祖母の死を通して、改めて祖母の偉大さを知り、そんな祖母が生き抜いた昭和の時代を詳しく知りたいと思い始めました。私をとりまく社会は、新しい発見から生まれたものももちろんありますが、昔から延々とつながっている伝統の産物でもあり、それなしでは成立しないと思います。伝統はどうやって受け継がれるかというと親から子へ伝える「言葉」が大きいと思うのです。母親がぽつりと言ったことは、私にも誰にも言えることで、私自身も後悔しないように母親からたくさんのことを学ばなければいけないと思いました。 過去と今は連続してつながっている。伝統を通して昔の社会と今の社会がつながっていることと、ゲノムを通して昔の生きものと今の生きものがつながっていること。こういった日常に感じたことを生命誌に関連づけたりもして、つながりは大事だなと日々思うわけです。 さて、話はとびますが、半年温め続けた2つの大きな初仕事がようやく実りました。「お届け生命誌ボックス」と「エコシアター・リニューアル」です。今回はお話するスペースがないので次回にご紹介したいと思います。 |
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[ 板橋涼子 ] |