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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【趣味の生物學】

北地直子
手元に一冊の古い生物の本があります。

『趣味の生物學』
太田章一 著/東京教育研究會出版

小学生の頃、茶道の先生にもらったもので、実家で眠っていたのを先日発見しました。
もっと難しい書名だった気がしていたのにと思いながら、紙箱から本を抜き出すと、布張りの表紙にはエリマキトカゲの挿絵。
そうそう、当時TVのクイズ番組「わくわく動物ランド」(1983〜)に始まり、三菱自動車ミラージュのCM(1984)でエリマキトカゲが人気者になっていたので、この絵には反応した覚えがあります。
とはいっても、この本の発行は大正14年。定価2円50銭。本を開けば、一枚目の口絵写真は、「ンィウーダ」。
進化、発生、分類、遺伝、について書かれてありますが、「生物學的人生觀」「死んでからの命」というタイトルもあり、今の教科書とは趣が違います。
著者によれば、
「本書は著者が多年生物學に親み、内外諸書を耽讀して、誰もが知つて置いたらと思つたやうな事柄の中、何人にも興味深き諸問題を捉え、勉めて平易簡明に書き下したもので、…併しどこまでも細心、學術に忠實なるやう留意し、所謂通俗に堕することを避けた。…」
「…現下教育上の諸問題は、之が解決を獨り道徳經濟にのみ期待すべきでなく、生物そのものゝ内に、深く解決の鍵が秘められて居るのではないかと思ふので、特に廣く普通教育者諸氏の一讀を切望する。…」
とありまして、高等師範学校で使われていたものですから、当時の先生や先生の卵を対象に、広く一般に向けた本であったようです。
「勉めて平易簡明に」「學術に忠實」といえば、私たちも常々肝に銘ずるところ。「生物そのものゝ内に、深く解決の鍵」を探すところは、生命が基本の社会を目指す生命誌と通じるものも感じます。
エリマキトカゲしか覚えていませんでしたが、皆に知ってもらおうと思って伝える時の基本「簡明」「忠実」を改めて教えられました。

P.S.
『生命誌 2004』年刊号、2005年3月末 発行予定!
「勉めて平易簡明」「學術に忠實」ご一讀を切望いたします。



[北地直子]

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