展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【桜シャワーを浴びながら】
私が、これからサイエンスコミュニケーション&プロダクションを取り組む上で大切にしたいと思っていることは、心の揺さぶり。というよりも、大切にしたいことを漠然と考えていたら、この生命誌研究館のサイエンスコミュニケーション&プロダクションに流れ着いた・・です。心を揺さぶりあう・・どのような方向へ揺れるか、それは人によって違うと思います。方向を決めたい、というのではなくてその前の、心のブランコを揺さぶるための最初の「ひとこぎ」に、生命科学を表現するという形で参加できたらすばらしいな、と感じているのです。というのも、生命科学研究から、私自身が具体的な感動を得ることを体験したからです。それは音楽やアートから感じられるものとは違う、より具体的な、自分に直接関係するような感動でした。 私は大学で植物の発芽する仕組みを研究テーマにしていました。植物の種子は、発芽するかしないかを環境との相互作用で決定する機構を自ら持っています。生きていくために、ここの光、温度、水などの条件が自分に適切なのかどうかをチェックして・・ようやくポコリ。この発芽するまでの環境チェックの方法が、人には分からないことだらけ。どうやら非常に複雑で、独特な仕組みのようです。植物は動物のように歩いて環境を変えるのは無理なのですから、発芽は生きるためのビッグイベント。そんなメカニズムが砂粒ほどの種子(シロイヌナズナの種のこと)の中にあるなんて・・。私は、それぞれの生物に人間の想像を越え、みごとなシステムが備えられていることを目の当たりにして、生き物が存在する意味が、生物の仕組みの中でこんなにたくさん示されているじゃないか!と感じてしまいました。みんなにも感じて欲しい。今までにそのような想いを私に育ませ、さらに表現するという新しいチャレンジを与えてくれた多くの人たちに感謝して、今度は私のワクワクしていることが、花びらのしんぶんみたいに、みんなを喜ばせることにつながるといいな!と思いつつ、桜は散ってしまったけれど、若い緑で眩しくなった景色を楽しみながら今日もBRHへの道を歩いてきました。 それでは、これからよろしくお願いします。 [坂東明日佳] |