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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【生命誌の階段】

工藤光子
 新BRHに入ると、目の前にDNAの2重らせんをモチーフとした4階までの階段があります。この階段、12月に照明・映像・タッチパネル・イラストで構成された「生命誌の階段」に生まれ変わり、「なんということでしょう、階段が生命誌を語る美しい場所に生まれ変わりました。」というどこかで聞いたようなナレーションが聞こえてきそうなできばえになりました。

 私がチーフになった頃は、「BRHってなんだか良く分からないけど面白そうで新しいことをやっているところ」という外向きイメージはもう許されず、BRHってこんなところですというイメージを活動内容に則してわかりやすく表現しなければいけない時期になっていました。ということで、外の看板、パンフレット、館内案内サインなど、そういうことが得意な北地さんにお願いしながら、こつこつとイメージづくりをしていきました。さまざまなbefore afterができたわけですが、今一つできていなかったのが、入った時の館の雰囲気づくり。BRHは研究所ではなく研究館なので、建物に入った瞬間に科学のコンサートホール!って感じにしたいわけなのですが、それってどんな感じ?と自問し続けて、辿り着いたのが今回オープンした生命誌の階段なのです。
 1階は地球が誕生した46億年前、一番上の4階は現在。階段の壁面にはその時代にあったテーマや生きものを描いた作品が飾っています。階段は二重らせんをイメージしているので、3階にも4階にも2方向から登ることができます。ですので、生きものの共通性からみた進化のコースと多様性から見た進化コースを設定し、共通性はDNAって何?で水彩のイラストをお願いしていた明石ひろみさんに、多様性は生命誌20号のサロンにも登場したサイエンティフィックイラストレーター菊谷詩子さんにお願いしました。菊谷さんと私は実は高校の同級生です。再会は卒業してから8年後にBRHにて。こんなところで再び出会うなんてと不思議な縁への驚きで、照れくさかったことを覚えています。彼女は、生物学のドクターコースを中退し、アメリカでイラストレーションを学び、フリーで活動した後、昨年帰国して活動を続けています。彼女の描く世界は、生きものを見る視点が、科学者でもあり芸術家でもあるだけに、見ごたえがあります。再会した時からいつか一緒に仕事をしたいと思い続け、やっと巡ってきた今回の仕事です。テンペラ画という画法を取り入れて描かれた29点の作品が語る進化の物語、美しく閉じ込められた世界を一つ一つ読み解きながら一つの細胞から始まって、さまざまな生きものが登場するさまを楽しんで下さい。下りは共通性。こんなに多様な生きものだけれど、そこにはある共通のルールが存在します。新しいルールができ、その中で多様性が生まれるのです。こちらもなかなか見ごたえ十分。細胞がくっつけなければ多細胞にはならないよね、などと考えながらゆっくり降りて下さい。
 こんな方法で進化を伝えるなんてBRHでしかできません!うーん、良い仕事したなと自分を誉める日々です。

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BRHにはもう一つ1階から4階の非常階段がらせんになっていて、これもDNAをモチーフとしているそうです。非常階段なので1回転で10段とかチェックしていませんが、、、。


[工藤光子]

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