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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【まわっているのは好い 】

2001年7月1日

 シーズンオフの温泉街の、干物と真珠を並べて売っているような土産物やが「旅館案内所」の看板を出している。そんな場所で宿探しをはじめると、時間が自然にまわっていく。旅行代理店やインターネットだと、手続きのための手続きをしている自分を感じ、まだ終わらんのか?という気になってしまう。
 先日おじゃました旅館案内所兼土産物やでのこと。安く泊まりたいと言うやすぐ、店員さんがとある宿を勧めてくれた。海が見える、リピーターだらけ、揚げ油は二度目を使わない等々、とにかく街一番の良心的な宿だという。場所はどこかと尋ねると、通りを挟んで真ん前の建物がそれだった。話の胡散臭さにかえって興味がわき、一泊お願いしてしまう。その宿、通された部屋は海ではなく通り側に面していたが、海鮮料理と気さくな女将さんが気に入った。さいごによかったのが、宿の売店の買い物システム。私の支払ったお金を女将さんが握りしめ、「ちょっと待ってね」と例の土産物やにお使いにいくのである。
 時間にしても、お金にしても、目の前でまわっていると心が落ち着く。むかしむかし、懐中時計や貨幣が発明されていない時代の世界観には、“時は金なり”という格言や“○○している自分”という概念はなかったそうだ。いま、生命誌研究館のホームページのリニューアルを企画していることもあって、世界がウェブでつながる、家に居ながらインターネットで何でもできる、という世間(ビジネス?)の勢いに触れる機会が多い。いろいろ新しい企画を考えるのは楽しいが、そんなに親切便利にしていったら、ひきこもり人口が増えるよ!とも思う。“ウェブにつながっている自分”を家に置いて、通りを挟んだあの二軒にまたおじゃましたい。
[桑子朋子]

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