展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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先日、来年公開予定の脳の進化についての展示の調査のために北海道大学に行ってきました。澤口俊之先生や水波誠先生にお会いしたのですが、そこで改めて脳の進化の研究はほとんどされていない(とくに日本では)ことを知りました。文献調査していたときも、脳の進化に関しては極端に刊行物が少なく、どうしてだろうかと疑問に思っていました。どうやら脳の進化に関しては、仮説ばかりがあって、その実証、反証が難しく学問として成り立ちにくいということが原因のようでした。酒の席で語り合うことはあるらしいのですが、学会などで発表されることも稀なようです。発表があっても、それに対して「学問かお話か」といった痛烈な質問を浴びせられることが多いらしく、誰も公には発表できないというのが現状のようでした。残念に思うと同時に、これからの学問だとも感じました。
現在、脳科学といえば機能を調べる研究が中心ですが、脳も進化の歴史的産物であり、その構造や機能には歴史の跡が記されているはずです。今回の展示は、こうした視点で進めていきたいと思っています。そして、そのことによって、人間にとって最大の関心事の一つである脳のあまり意識されていない側面を見せることができればと思っています。
[鳥居信夫]
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