1. トップ
  2. 語り合う
  3. 【お盆はいかが?】

表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

バックナンバー

【お盆はいかが?】

1999年9月1日

 お盆のころになると、チョウチョやトンボが家の中に入ってくるようになる。それは亡くなった人が戻ってくるのだ、ということを言う人がいて、はっとしました。父と母の家を整理していて、ちょうど前日、きれいなアゲハチョウとシオカラトンボが開け放した窓のカーテンのあたりで、ぱたぱたがざがざしていたのが鮮明な印象となって残っていたのです。
 後ろに山を背負った田舎の家では、真夏でも、エアコンより自然の風の方が気持ちよく、鳥の声や虫の声が眠りを誘う午睡も、窓を開け放したまま。
 ハチやアブ、いろいろな翅虫、時にはゲジゲジなどが家の外と中を行き来しているのを見かけます。外壁にはヤモリ、庭にはトカゲ。小さなカマキリがいたので、そっとしておいたら、次の日は、2階から台所まで降りてきて、気がつくとエプロンの胸元に留まっていました。
 要するに、この季節には、そのような小動物が家の周りに多く、家を開放する生活では中に入ってくるのはとても自然なこと。それが、お盆という人の暮らしの行事の中で語られているのです。
 こうした行事に関らざるを得ない年齢になって、自然の生き物と自然に関わっていた昔からの人間の暮らしに気づくようになったわけです。伝統行事やしきたりは、生き物との自然な関り方を伝えていく大事な行為という一面をもっていることを実感した夏休みでした。生活の中から自然が失われがちな現代だからこそ、意味があるかもしれませんよ。
[高木章子]

表現スタッフ日記最新号へ