展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
バックナンバー
【the study roomとの出会い】
1999年9月15日
今の日本では残念なことに、研究でわかったことを誰にでも届けられる形にするということがあまり行われていません(もちろん私達はそれをいろいろな形で模索しています)。でもそういうものを世界中から探しだし、お店に置いている方がいる。これは、どんな人が、どんなことを考えて集め、お店を開いたのか聞きたい!と思って、会いに行きました。 お店に置いてあるものは絵本、図鑑などから骨格標本、サイエンスって面白い!と思わせるラインナップばかり。最も私が嬉しかったのは、メンデルのエンドウ豆の掛け合わせ実験の小さなケース入りパネル。この実験は始めて遺伝という概念が証明されたとても素晴しい研究です。そのパネルには豆の親、子供、孫の三代が貼ってあります。つまり丸い豆としわの豆を掛け合わせると、子供はみんな丸い豆になる、そしてその孫には丸い豆としわの豆がある決まった比率で出来てくる。ということを、実際の豆で説明したものです。思わず購入。お豆ならどこにでもあるし、遺伝の概念を知っている人もたくさんいる。でも、遺伝の概念をこのパネルにお豆を貼ってケースに入れる形にするところがすごいんです。そして、それを見つけて来る感覚を持つこのお店はすごいのです。 パネルを購入した私は早速、SICP スタッフを呼び集めすごいでしょー!と我がもののように自慢したわけです。この、自分のものにする喜び、さらにその物があるおかげでいろいろな人にさらに広げられるということ、ここに目を向けサイエンスの面白さを伝えようという考えは、素晴しい。私にとって、新しい別の扉が目の前で開いたのも同然です。このお店を手がけているのはデザイナーの方。こういう物を探し出す感覚はどこで磨かれたのですかと尋ねたら、自分が面白いと思うものを集めたのです。というお答えでした。 私は長い間、研究者から研究を表現したいという気持ちを受け取っていました。でもその気持ちのバトンを受けて走る私は、一体誰にバトンを渡せば一番良いのか、ずっと探していました。そして、今回の訪問で、その相手を見つけることができたのです。果たしてどんな事が一緒にできるのか、新しいチャレンジです。 [工藤光子] |