研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
バックナンバー
EED2016に参加して
2016年8月15日
7月26日から29日にかけて、スウェーデンのウプサラで開かれた国際学会Euro-Evo-Devo(ユーロエボデボ)に参加してきました。(参考:バックナンバー クモ研究の偉大な創始者、ホルムをたずねてウプサラへ) ウプサラはストックホルムから電車で約1時間、北欧最古の大学であるウプサラ大学を中心とした学問の街です。キャンパス内には動物学博物館や古生物学博物館があり、生物の分類学の父として有名なリンネの植物園もあります。街には植物が多く、街角の何気ない植え込みも非常に美しくデザイン・管理されています。植物の種類の豊富さもさることながら、街の皆さんがリンネを大切にしているということに強く感動しました。
写真1. ウプサラ大聖堂と街の中心を流れる川
写真2. 大学内の何気ない植え込みも美しい
学会は、街の中心部にある大きなホールで行なわれました。世界中から500人以上の参加者が集まり、進化と発生生物学に関する200以上のの口頭発表と180のポスター発表がありました。「ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ」からは、小田広樹研究員が体軸形成のシンポジウムをオーガナイズし口頭発表を行いました。また、秋山-小田康子研究員と私の2名がポスター発表を行ないました。
個人的には、ポスター発表をしたことでドイツで同じオオヒメグモを研究しているグループの方々と情報交換が出来た事が大きな収穫となりました。オオヒメグモの遺伝子は2~3万種類(予測)もあるのに、まさか全く異なる実験的アプローチで一つの同じ遺伝子に辿り着いている研究者がいるとは思いもよらず。本当に驚きました。新規性という側面からはライバルですが、自分の見ている結果が間違ってないという確信にもなりました。幸い、こちらは他にも着目している遺伝子があるので、被らないように研究を深めていこうという流れになりました。学会に参加する事でしか得られないゾクゾクするような貴重な体験です。そして、日本に帰って早く今の仕事をまとめなければと気が引き締まりました。
学会最終日の夜は、ウプサラ城での懇親会がありました。小田さんらとはぐれた私は、オランダやドイツで研究しているアフガニスタン出身の方とテーブルをご一緒し、気づけば国や地域、宗教の話をしていました。「生きものと社会について考えるべきだ」と拙い英語で全力で伝えたことが忘れられません。
総じて、生きものを研究をしていることで世界中の人と考え方を交換することが可能になると実感した4日間でした。研究も伝える技術もより高めていきたいです。
写真3. 学会会場入り口に設置されたウェルカムボード