研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【次世代型シーケンサーで別次元の「ちょー気持ちいい!」】
2013年3月1日
広く普及して長く使われてきた塩基配列決定技術といえばサンガー法ですが、それとは異なる方法で配列を読む「次世代型シーケンサー」が登場して、ほんの数年の間に目まぐるしく高性能化・高速化・低価格化しました。「パーソナルタイプ」とか「ベンチトップタイプ」といった呼ばれ方をする小型のものは、特に激しい開発競争が繰り広げられています。
当館でも、illumina MiSeq を昨年秋に導入して、早速活用し始めていますが、次元が異なる莫大なスループットに「圧倒的じゃないか!」と日々驚かされています。以前、キャピラリー式シーケンサーを使って半年がかりで出していたデータ量の、2,000倍を超えるデータが39時間で算出されるのですから、圧巻の他に言うことが浮かびません。
実験は基本的に、プロトコールを正確になぞりながら進めます。なぜなら、実験プロトコールというのは誰かの沢山の経験や失敗から得られたら様々なノウハウの上に構築されたものなので、ちょっとでも変えるとうまくいかない事が多々あるものなのです。
導入された次世代型シーケンサーと、illumina 社自慢の Nextera というシーケンス用ライブラリー構築キットを使って、自分たちでアゲハチョウのゲノムを読んでしまおうと取り組んでいるのですが、illumina のプロトコール通りに行った実験の結果に不満が残りました。もしかしたらここはがっかりするべきところなのかもしれませんが、工夫と改善の余地が残されている事に少しワクワクしてしまいました。僕はプロトコールを改善したり、新しいプロトコールを作り出すことが好きなんです。
出力された結果をみると、どうもサイズの小さなDNA断片が邪魔になっているのではないかという印象を受けました。
そこで、以前にcDNAライブラリーを構築して実験に用いた経験から、簡便な操作で低分子のDNA断片を取り除ける、クロンテック社の「ChromaSpin」という製品を試してみたところ、大当たりでした。データ中の邪魔になっていたモノが減って、全体に品質と出力量が改善されました。プロトコールに工夫を加えることで期待通りに結果が改善されたときは「ちょー気持ちいい!」ものです。完成度が高いとされる illumina 社のプロトコールにも、改善の余地があったということに少し新鮮な驚きがありました。
とはいえ、まだ100%満足という結果ではないので、もうしばらくプロトコール改善への挑戦を楽しめそうです。
次世代型シーケンサー illumina MiSeq