研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【イモリとツメガエルの形づくり】
2012年7月17日
この数年間、イモリとツメガエルの原腸形成過程について、その似ているところと異なるところを調べようとしています。ここでも何度か書いたと思うのですが、特にその分子生物学的意味合いにおいて、ツメガエルは最もよく解析されている両生類であるのに対して、イモリはほとんど何も分かっていないと言っても過言ではありません。だから、イモリを解析すると言っても方法論がかなり制限されていてツメガエルとの違いを見ることは困難を極めていました。
この困難を打破するために、昨年から今年にかけて、イモリの初期発生期に発現する遺伝子の情報を片っ端から取って来ようと思い立ち、胞胚・原腸胚・神経胚・尾芽胚それぞれからRNAを単離して次世代シークエンサーでその配列を読んで、各発生段階それぞれから数万に及ぶ遺伝子情報を得ることができました。
現在、その中からツメガエルで重要だと考えられている遺伝子に相同なものを単離してその発現場所や発現時期を徹底的に調べていますが、これがとても面白い。ツメガエルとイモリの形態形成運動の違いから予測される発現を示す遺伝子もあれば、ツメガエルの情報からではまったく理解不能の発現を示す遺伝子もあります。あるいは、ツメガエルでは第一級の重要遺伝子だと騒がれていたものがまったく存在しないというのもありました。存在しないというのは、見つからないというだけなので、本当は存在するのだがたまたま今回は見いだせなかっただけなのかも知れませんが、実はこの遺伝子が存在しないと考えたら説明できる現象があったのです。この理解不能の現象は、ツメガエルと同じ遺伝子が同じように働いていると考えるから理解不能だった訳で、その分子機構がツメガエルとイモリではまったく異なると考えたら理解できるということです。まだまだ解析を始めたばかりですが、毎日「面白いなあ」と思って実験をしています。