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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【学生訪問】

橋本主税
 ひと月ほど前のことですが、鹿児島大学から二人の学生さんが実験をしに4日間ほど研究室を訪れました。実験によってはずっと動き回っていることもあるのですが、実験によっては待ち時間ばかりのこともあります。今回の実験は後者のタイプで割と時間が空いていましたので、私がいま考えていることについてそのバックグランドからゆっくりお話ししました。もちろん脱線しまくって本論よりも余談の方が多かったようにも思えますが、橋本という研究者を知ってもらうには十分だったと思います。なかなか優秀な学生たちで、素直な疑問点を素朴に質問してくるのですが、それがピンポイントで的を射た本質的な鋭い質問だったので、答えに窮する場面も頻繁にありました。あまりに本質的すぎると、表面だけで答えるわけにはいかず、その答えの周辺にある現象や哲学的背景などもお話ししなければならず、そこからどんどん横道にそれたりして楽しい時間でした。

 私が個人的に良かったかな?と感じたことは、研究者によって全く違う考え方を持っているということを肌で感じて頂けたと思えることです。どちらが正しいというレベルのことではなく、研究の考え方は画一的ではないことを分かって頂けたとしたら彼らにとっては良い経験だったのではないでしょうか。私が 学生の頃は、著者の個性が押し出された教科書がたくさんあったのですが、いまでは統一的な見解の書かれている厚い一冊の教科書しか普通には読まれないようで、そこには現象に対するひとつの方向性がまとめられているに過ぎません。だからついつい「研究とはこういうもの」と画一的な印象に終わることもあるのだろうと思います。

 実は彼らの先生も、教科書的からは少しだけ違う考え方をする人で、その「少し」の方向が私とは反対ですから相対的に私の話は彼らにとって普段聞く話とは「正反対」になった訳です。研究なんて、行なう人の個性が出ないと面白くないので、良くも悪くも同じツメガエルの初期発生をしている身近な二人の研究者が実は「全く違う」ということに触れてもらえたことは、良かったのかなと思っています。

 このような商売をしていると、30の手前まで学生をやっていますし、その後もずっと大学のようなところにいますから、いくつになっても学生気分が抜けません。だから、まだ二十歳そこそこの学生さんをみても「後輩」くらいの認識にしか私にはなりません。だから、「先生から学生」という話ではなく、「先輩から後輩」あるいは「友達同士」のようなつもりで終始話をしていましたが、それで良かったのかな・・・?



[脳の形はどうやってできるのかラボ 橋本主税]

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