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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【飼育のピンチ】

吉田昭広
 6月に入った頃からだったと思いますが、私が実験用に飼育しているモンシロチョウの「調子」が悪くなってしまいました。「全滅」こそしませんでしたが、幼虫の大半が(私が実験に使う)サナギに育つまでに死んでしまうのです。いろいろと思いつく点の「改善」を図りましたが、一向に収まりません。実験には多数のサナギが必要だったので、たいへん弱りました。「病気の少ないモンシロが、ついに悪性の伝染病にでもかかったのか。」と思い始めた頃にふと、産卵させるのに使っている市販のカイワレを、今までと違う業者のものにしてみようと思いつきました。それまでは、「カイワレの新芽は消毒されていないから、問題などあるわけがない。」と思いこんでいましたが。(後で、「タネが消毒される」ということを聞きました。)
 そうしてみた結果、今ひさしぶりに幼虫がうまく育っています。カイワレの状態はヒトには影響なくとも、デリケート(?)なモンシロチョウの幼虫には影響があったようです。とにもかくにもひと安心ですが、結局4ヶ月ぐらい悩まされ続けたことになります。こんなにまで解決の長びいた「飼育のピンチ」は初めてでしたが、なにしろいつでも購入できるような動物ではないので、年中あれやこれやと「調達」に気を使わされます。

 ある研究にとって多くの長所を備えた「モデル生物」と呼ばれるものであれば、使っている研究者が多いためもあって、手に入れることがたいへん容易です。それに加えて、研究上の情報や手段も豊富です。マウス、ショウジョウバエ、アフリカツメガエル、シロイヌナズナ、等々。「そんなのを使っていればなあ。」と思うことが無いわけではありませんが、「モデル生物」にない面白さをモンシロチョウの中に見てきたことでもあり、私にはやはりまだ手放せません。それに、研究の「すそ野」をある程度広げることは、研究全体の発展にとってたいせつだとも思います。「モデル生物」の提供してくれる情報や手段を利用させてもらい、一方「モデル生物」に不足する要素をこちらが補完して、なかよく共存しながら発展を図りたいものです。飼育の気づかいは、やや多めに負担せねばなりませんが。




[チョウのハネの形づくりラボ 吉田昭広]

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