研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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はじめまして。大学院1回生の、山田 歩です。今年の4月から、「昆虫と植物の共進化ラボ」で修士課程の研究をさせてもらっています。私は京都府の出身で、大学は神戸、大学院で大阪にやってきました(めでたく「三都物語」達成です)。こんな関西大好きな私ですが、この6月から、思いもよらない文化交流をすることになったんです。今回は、その中からひとつお話したいと思います。
この春に私はこの研究室の「新人」になったわけですが、その座はわずか2ヶ月しか持ちませんでした。6月15日、ひとりの青年がはるばるフランスから高槻にやってきたのです。(紹介があると思いますが)彼の名前はYann Salahun、フランスの大学からインターンシップ生として日本へ留学に来ました。正直に申しますと、私はとてもとても緊張していました。「どうしよう!英語でしゃべれるのかな?実験の説明とかわかってもらえるのかな……」などなど、心配しすぎです。ところが実際に向き合ってみると、お互いが必死で分かり合おうとしているからか意外にも話ができます。今は、彼も私も研究室のみなさんもリラックスしてきて、冗談が言えるくらいになりました。
ある日のこと、ヤン君と私は中山さんからチョウの飼育について教えてもらっていました。その中で、ヤン君は「今までに虫を飼ったことがない」と言いました。そして中山さん曰く、昆虫を飼育することはほぼ日本独自の文化だそうです。犬を飼ったり、チョウやオサムシなどの美しい昆虫を採集したりすることは世界各地で行われています。でも、卵からチョウを育てたり、カブトムシの幼虫を飼ったりすることはないそうです。私はとても驚いてしまいました。
それから考えてみると、「昆虫の飼育」には、純粋に育てる楽しみしか存在しないのかも知れないなと思いました。昆虫が人になつくという話は聞いたことがありませんし、よほどの虫好きでなければ蝶の幼虫に癒されることもないでしょう。でも、今でも小学校の教室には先生が指導したわけでもないのに、アゲハチョウの幼虫やバッタが飼われています。カブトムシがこんなに立派に育った、羽化の瞬間が見られた、幼虫が脱皮して嬉しい、という感動は日本人特有のものかもしれません。
昆虫に限らず、「虫なんて気持ち悪い!」という女の子たちでも、一生懸命たまごっちを育てています。飼育系のゲームが大人気になるのも、うなずける気がしました。日本人は、根っからのブリーダー(breeder)なのかも。
今、ヤン君は人生初めてのナミアゲハの飼育に挑んでいます。私はこれから1年間、この異文化交流の絶好の機会を生かしていきたいと思います。文化が違えば、物事の考え方・現実の捉え方・理解の道筋も違うようなので、お互いに新鮮な意見交換ができそうで楽しみに思います。
もちろん、研究も同じくらい熱心にがんばります!
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[昆虫と植物の共進化ラボ 大学院生 山田 歩]
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