研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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季節はずれですが、某豚まんのCMをごぞんじですか?おそらく関西ローカルなのですが、豚まんが「あるとき〜(大阪弁)」は、家族円満にこにこ顔でとても明るくて、「ないとき〜」は、すさんだ風が吹いていてとても暗い、ので、豚まんを是非食べましょう、という趣旨のCMです。豚まんの「ある・なし」で、そんなに露骨に状況が変わる事はないでしょうが、あると少し幸せな気分になったり、ないとがっかりしたりとかは確かにあるかな、と納得したりもします。
なぜ、唐突にこういう話かというと、日頃研究活動をしながら、私たちのやっている実験ってある意味これと似てるな・・と思っていたからです。私たちは、発生の過程で何かの遺伝子の働きを調べるときに、その遺伝子を大量に働かせたり、全く働かなくしたり、といった実験方法を使います。もし、その遺伝子を普段より大量に働かせたときに、例えばですが、頭がもう一つできたりすると「ああ、この遺伝子は頭をつくる働きがあるんだな」と解釈しますし、その遺伝子をなくすと頭ができなかったりすると「やっぱり、この遺伝子は頭をつくるのに必要だったんだな」と考えます。こんな感じで、頭をつくるのに、胴体をつくるのに、目をつくるのに・・・必要だと考えられる遺伝子を調べていきます。つまり、遺伝子の「ある・なし」での変化をみて、その遺伝子の役割を推測するのです。「あるとき〜○○になる・ないとき〜××になる」といった感じです。そのこと自体は、確かに正しい、けれど、そんな単純な話だけでは、いきもののことはなかなか、分かったようで分からないのが実際です。
たとえば、何かに重要だと思われていた遺伝子が、全く違うところでも重要な働きをしていたりして、場面によって何をつくるために働くのかが違ってきます。ですから、一つの遺伝子を、「これは○○の遺伝子です」と言い切れることはほとんどありません。確かに、遺伝子から読みとられてつくられる蛋白質の形や機能は徐々に明らかになりつつありますが、これは、豚まんが「食べ物」ですよ、と分かる程度のことで、いつ、どうやって食べられる物なのかなど、詳しいことは全然分かっていないのです。働く時や場所によって役割が全く違ってしまう、そんなつかみどころのないものを、とりあえず今は、時や場所を出来るだけ限定して、「あるとき〜・ないとき〜」で調べていくしかない、のでしょうか・・・
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[脳の形はどうやってできるのかラボ 大学院生 山口真未]
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