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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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尾崎克久
 実は私、生命誌研究館でオサムシの分子系統や骨格など、研究に関する斬新な展示を行っていることを知りませんでした。奨励研究員の公募があって、面 接に訪れたときに初めて知り、その内容のすばらしさに驚きました。もちろん、生命誌研究館の存在は知っていましたし、どのような研究が行なわれているかも知っていました。知っていたというより、自身の研究を進める上で、いろいろ参考にさせていただいてました。ただ、生命誌研究館というところは、研究をするための機関であって、一般 向けの展示を行なっているとは全く考えていませんでした。

 その原因は、「研究成果というものは学術的な雑誌や学会誌等に論文として公表するものである」という先入観を持っていたことに他なりません。また、研究者が学問へ貢献するための手段は、論文の執筆や学会発表であるという固定観念もありました。研究者にとっての大敵は、先入観を持ったり固定観念を持つことで、重要な事実を見のがしてしまうことだと思いますが、自分の中に先入観や固定観念に縛られている部分があるのだということ気付くきっかけになりました。

 生命誌研究館の様々な活動を経験し、研究成果というものは、論文や学会発表以外での形を含め、より広く知れ渡ることで価値が増していくものなのだと感じています。日々あれこれ考えながら実験を行い得たデータを、論文という言わば研究者としての正式な公表をした後は、それに満足しないでさらに広く伝える努力もこれからは必要なのではないかと思います。「そういうものである」という思い込みは、新しい発想を生み出す柔軟な思考を阻害します。生命誌研究館の活動は、「研究とはそういうものである」という形に縛られておらず、改めて柔軟な思考の大切さを教わりました。

 早く自分も展示に使ってもらえるような結果を出し、活動に貢献したいものだと気持ちを引き締めつつ、ここでの研究生活が始まって半年、未だこれといった結果 を出せていないにもかかわらず追い出さずにいてくださるボスの寛大さに感謝しながら日々を過ごしております。


[吉川ラボラトリー 奨励研究員 尾崎克久]

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