館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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“正しい”かどうか以前にあたりまえのこととして
2019年8月15日
8月の初めにはやはり核のことを考えます。私は敗戦の年に小学校四年生で空襲や疎開の体験者です。戦地で戦った人だけでなく、内地で戦争が人間から生きることを奪い取るいかにバカバカしいものであるかということを体験した人もどんどん少なくなっています。広島・長崎での体験は人間のこれからの生き方を考える時の原点として次の世代につなげなければならないと思います。
軍縮担当の国連事務次長である中満泉さんが「核を巡る安全保障環境は危険が増し、複雑化している」(毎日新聞)と書いています。実感です。日本人女性がこの職にあることはなんとすばらしいことかと思い活躍を期待しています。気になるのは米国のトランプ大統領を初め、政治家達が眞剣にそれに取り組んでいるとは見えないことです。中満さんはこう書いています。「私たちはそれが“正しい”という理念だけで核軍縮や核廃絶をやるべきだと言っているのではない」。その通りです。核兵器なんてリスクでしかありません。そんなものを使う戦争をもし始めたらどうなるか、そのくらいの想像力のない人はいないでしょう。本当の意味での抑止力ではありませんし、誤使用の恐さを思ったら即刻なくしましょうと思うのが普通でしょう。サイバー攻撃、AIの兵器利用なども出てきて・・・生命誌としてはここで73億人は皆んな祖先を一つにした仲間であり誰も敵ではないというあたりまえの発信を続けます。正しい正しくないではなくあたりまえのこととして考えなければいけないと思うのです。