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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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「そしてこれから」は

2019年7月15日

「季刊生命誌」の100号がお手元に届いていることと思います。メールやお手紙などでの御感想をたくさんいだいており、心からの御礼を申し上げます。仕事は毎日の小さな行為の積み重ねですが、時に区切りをつけることも大事です。これまでにも、10周年、20周年という形での区切りで積み重ねに減り張りをつけてきました。朗読ミュージカル「いのち愛づる姫 ─ ものみな一つの細胞から」と人形劇「セロ弾きのゴーシュ」では思いきり「生命誌」を表現しましたが、思いはどこまで通じたでしょう。

「季刊生命誌」には小さなエピソードがあります。始めてから10年は冊子の形で出していました。内容にも意匠にも「生命誌」らしさを意識して。ある日、国の大きな機関が新しい広報誌として送って下さった冊子が、机の上に置いておくと「生命誌」と見間違えるほど似ていたのです。抗議をしなさいという友人もいましたが、そんな大人気ないことはできません。でも同じようなものをつくるのはイヤ。そこで今のカード、Web、本という三つのスタイルでの発刊をきめました。それが「生命誌」にふさわしいと考えて。実は、変更のきっかけになった冊子はあまり続くことなく消えましたが、今ではありがたい圧力だったと思っています。

100号は、ごらん下さったように「わたしの今いるところ、そしてこれから」です。遠くを眺めながら考えているのは「ふつうのおんなの子」。「わたしの今いるところ」はかなり明確に出せているつもりですが、「そしてこれから」はどうなることでしょう。101号・・・あれこれ、あれこれ考えなければなりません。ここはやはり「基本は変えずに変る」ことを38億年もやってきた生きものに教えてもらう他ありません。新自由主義というマーケット任せのおかしな競争社会は、生きものが生きにくい社会であることははっきりしています。「人間は生きものです」というあたりまえのことを言い続けるのは、まず過剰な競争のおかしさに気づいていただきたいからなのですが、なかなかです。そんな中での「これから」・・・是非お知恵をお貸し下さい。思いついたことを書き込んで下さい。

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