館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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だんごむしの秘密
2019年4月26日
昨日は東京国立博物館で開催されている「国宝 東寺 ─ 空海と仏像曼荼羅」で東寺の立体曼荼羅を楽しんできました。その話を書こうと思っていたのですが、今日机の上に置かれていた企業誌をパラパラと読んでいたら面白い記事に出会ってしまいました。空海さんは来週ゆっくりお伝えすることとし、当面眼の前の話を紹介します。
テーマは「だんごむし」です。カプセルトイ(「ガシャポン」と言うのだそうです)って御存知ですよね。自販機の中にいろいろなオモチャが入っていて、子どもたちがレバーをまわしてまさにガシャポンと出てくるのを楽しんでいるあれです。たいていのオモチャはカプセルの中に入っていますが、「だんごむし」はカプセルレスといってまるまったダンゴムシがそのまま出てくる超人気商品とのことです。
カプセルは捨てられるのにコストがかかることに悩み、カプセルレスを狙っていた開発者。小学生のお嬢さんが公園で見つけたダンゴムシを丸めて楽しんでいるのを見てこれだ!と思ったのだそうです。自分でカプセルになっているようなものですから。商品化された「だんごむし」は実物の10倍ほどもあり、殻の部分は硬いプラスチック、足の部分は柔いプラスチックでできているとのこと。写真を見るとなかなかのもので、人気があるのがわかります。
ところで、私が興味を持ったのは、図鑑で構造を調べ、殻を重ね合わせて作った試作品がどうしても丸まらなかったという話です。工学的に考えて構造に改善を重ねてもうまく行きません。万策尽き、実物を手にとってよくよく眺めたところ、前から四番目の外殻が一番小さいことがわかり、その通りにつくったらくるっと丸まったというのです。なんということ・・・。丸まってあたりまえと思って見ていましたが、そんな秘密があったのですね。御存知でしたか。生きものって面白いですね。どこかで自販機に出会ったら、ちょっと「だんごむし」がいないか見てください(おもちゃ屋さんのまわし者ではありません)。