館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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いわゆるメジャーではなくジワジワと広がる
2018年2月1日
私の中にはどうもマイノリティでいるのが暮らしやすいと思う気持があるようです。物事を深刻に考える人ではないので、ある時出会って面白いと思ったことを仕事にしてきましたが、なぜかいつもその時点ではマイノリティというところにいることになりました。
大学で理系に入ったのが始まりでした。約500人の同期生の中で女子は3人でしたから。そこで「化学」を選んだのですが、授業でDNAを知り、そういう名前の教室さえまだない「分子生物学」に足を踏み入れることになりました。渡辺格先生との出会いです。その後江上不二夫先生が始められた「生命科学」へ。更にそこから、今度は生れて初めて自分で考えた「生命誌」へと移りました。「化学」というメジャーから「分子生物学」へ。分子生物学がメジャーになると「生命科学」へ、「生命科学」がメジャーになった頃「生命誌」へ。これがメジャーになったらまたどこかに眼が向くのかもしれませんが、幸か不幸かメジャーになっていませんね。本人が居心地よく楽しんでいるのでメジャーにならないのは当然かもしれませんが。
でも今年の始めに書きましたように、少し変わらなければいけないかなと考え始めています。今の社会は「いのちを大切に」という基本を忘れて動いており、これからもよくない方向へと向いそうな気がします。そこで、生命誌の考え方をなるべく大勢の方にわかっていただくことが大切という気持が強くなっています。メジャーになるというのではなく、ジワジワと滲み込むように広がっていかないかな。さまざまな分野のすばらしい方たちが生命誌に関心を持って下さっているのだからなどと考えています。いわゆるメジャーではなく、広がりあるマイナーになるにはどうするのがよいでしょう。これは一人ではできませんし、館の仲間だけでもできません。これを読んで下さっている方にジワジワ係をお願いするほかない。今思うことです。