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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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ポスト・トゥルースを勝手に体験

2017年2月15日

全豪オープンテニスでは、本命だったジョコヴィッチとマレーが早々と敗退。結局錦織を破ったフェデラーとナダルという予想外の決勝戦でした。もちろん二人共長い間トップに位置してきたヴェテランですから、古い人間にとっては却って魅力ある組み合せです。どちらかと言えばフェデラー派、でもナダルも嫌いではありません。

混合ダブルスの後で放映と聞いて、まず混合を見ました。アメリカとコロンビアのペアがみごとな協同作業で優勝。そしてフェデラー、ナダルが始まりました。タイブレークの末にまずフェデラーが勝ち、続いてナダルが2勝・・・5セット目まで闘ってナダルが勝ち。ところが、翌日のニュースでフェデラーが優勝と言うのです。これを聞いて、アナウンサーが間違っている、きっと抗議が来て訂正されると思ったのですが、何事も起こらず・・・そこで新聞を開いたら優勝カップにキスしているフェデラーの写真が大きく載っています。それでもまだ・・・ウェアが違うことに気づきました。私が見たのはブルー。やっとここで、試合が始まるまでの時間、以前(実際には2009年)の二人の決勝戦を放映し、それを本物と思ってハラハラしながら見ていたのだということがわかりました。

ここまで分ってもまだおかしな気持なのです。その気になって実際に映像を見たという事実が頭から抜けず、落ち着きません。ふしぎな体験です。「ポスト・トゥルース」と言われますが、思い込みって本当に恐いものだと実感しました。今回は勝手に自分でしてしまったことですが、意図的に誰かに誤った情報を伝えられることが少なくない時代になったというのですから気をつけなければなりません。とくに映像を信じてしまうことの恐さを感じます。

全豪については、とにかく今年の試合を見たいものです。どこかで再放送があることを願っています。

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