館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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よい歌をよい声で
2016年8月15日
新幹線の往復も毎週となると日常の仕事場の一部になっており、この環境に一番適した仕事はゲラ直しです。実はこのところ「エッセンシャル細胞の分子生物学 第六版」に次いで、「遺伝子の分子生物学 第七版」と続きました。なぜか版が改まる時は重なることが多く、二つが終ったと思ったら「細胞の分子生物学 第六版」が始まり、現在進行形です。基本部分は変りませんが、ゲノムの話はエピゲノムへ。それに技術開発がすごいですね。どこまで続くのか。そろそろこのあたりで卒業しようと思います。どんどん細かくなるので少々面倒になり、DNA → RNA → タンパク質という単純な話を楽しんでいた頃がなつかしいというのが本音です。
本を読んだり、新しいことを考えたりする時には音楽はダメなのですが、ゲラ直しは逆に音楽が必要です。以前新幹線にはベートーヴェンの七重奏曲が最も合うと書いたことがありますが、最近はエルヴィス・プレスリーが気に入っています。若い頃、プレスリーと言えばとんでもない歌をとんでもないスタイルで歌う奴と言われ、よい子が聞くものではありませんとされていたのを思い出すと噴き出したくなります。よい歌をよい声でみごとに歌い、聞いていて気持がよいこと。「Love Me Tender」「Are You Lonesome Tonight」「G.I. Blues」「Blue Hawaii」・・・
最近のラップなどは苦手で聞きたい歌がない中、プレスリーを聞きながらDNAが単純な話だった頃をなつかしむ。これが年齢というものかなと思っています。