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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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2015年も終ります

2015年12月15日

2015年が終ります。おかげさまでBRHは皆でコツコツと仕事をするという日常を続けることができましたが、社会全体の動きは落ち着かないものでした。もちろん私たちは社会の一員ですから、この落ち着かなさに知らん顔というわけにはいきません。とくに中東を巡る武力行使、難民、テロとつながる動きには、なぜ今こんなことをしているのだろうという問いと、その愚かさがわかっていながら止める力がどこにもない空しさとが重なります。

実は先日、「いわき市立美術館」を訪れた時海岸へ連れて行っていただきました。建物も人影もない広い更地になっている海岸で見えるのは、長く続く高い防潮堤だけ、海は少しも見えません。潮の匂いもしませんでした。日常海が見えなければ異常もわからないとは地元の方の言葉です。何をやっているのだろう。わけがわからなくなりました。空しさの一つです。

皆んなが普通に暮らす ——— この皆んなは人間に止まらず、生き物たち皆んなですが ——— 生命誌の基盤はここにありますので、こういう世の中は辛いです。来年は少しでもよい年にと願います。皆さまも同じ気持でいらっしゃることでしょう。よいお年をお迎え下さい。

P.S. ちょっと一言では日常雑事を書いてきました。とはいえ、研究館の活動と並行してさまざまな分野の方に教えていただいたり、自然から学んだりしたこともあり、生命誌と日常のつながりの大切さを実感しながら書いてきたものです。科学や研究というと自分とは遠いと思われる方が多いと思い、そうではないという気持を伝えたく思ったからです。その中にはそこからの連想など思われたことを一言書いていただきたいという気持もありました。でも・・・来年はと、少し考えこんでいます。

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