館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
バックナンバー
BRHは室内楽
2014年7月15日
7月5日(土)に、20周年記念の催しでセロ弾きのゴーシュを演じて下さった谷口賢記さんの本業、スタイナート・トリオの演奏会に行きました。同じJTアフィニス・ホールです。ゴーシュの時は、舞台上に作られた高い台の上に乗せられてあれこれ要求され大変だった賢記さんが、本来の舞台の上で生き生きと演奏している姿に、他の演奏家に対するのとはちょっと違う感慨をおぼえながら楽しい時を過ごしました。更にもう一つ強く感じたことがあります。BRHはピアノトリオをやりたいのだということです。またとんでもないことを言い始めたと言われそうですが・・・。トリオやクァルテットには指揮者はいません。演奏者がお互いに、お互いの音を聴き、心を通わせ合いながら音楽を作っていきます。時に舞台の上で眼を合わせる様子がいかにも楽しそうです。ここで音楽を最も楽しんでいるのはまぎれもなく演奏者です。確実にそうです。もちろん私たち聴衆も楽しみますが、それ以上に演奏者が楽しんでいるのが羨ましくなりました。これです。まず自分達が楽しむこと、それによって最高の表現をめざすこと、そこで聴く人も楽しくなること。これまでも研究館(リサーチホール)は活動を演奏する場であると言ってきました。論文は楽譜であり、それをいかに表現するかが大事だと。そう言いながら、ぼんやりとオーケストラをイメージしていました。実はそうではなく私たちの表現は室内楽、しかも弦だけでなくさまざまな楽器が合わさった室内楽だと思いました。お互い眼くばせし合いながらよい表現をしていきたいものです。
STAP細胞の問題など、科学の本質を考えなければならない今、科学の世界にこの考え方が広まるとよいと思うのですが、相変わらず啓蒙に予算を使っています。
(8月23日(土)に高槻現代劇場で「セロ弾きのゴーシュ」をいたします。進化学会の催しで、無料御招待です。ホームページの中にお知らせがあります。)