館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
バックナンバー
科学的でなくとも
2014年2月17日
何かと気になること、思うようにならないことが多くなってきたような気がします。一つ一つを気にして額にしわを寄せていたのでは身が持たないと思いながらも、あまり無責任でもいけないとここでまた悩みます。
笑うと免疫力があがり、健康によいと言われますし、笑って暮らせるようにしたいものです。と思っていたら、笑いと免疫の関係を見る研究に関わった方が、面白いエピソードを紹介しておられました。がんの患者さんを吉本に連れて行き、笑う前と後でナチュラルキラー細胞の活性を測ったら、後の方が高かったというのが話の始まりです。ところが、三回目、四回目になると上がらない。患者さんの中に、吉本に行ったら免疫機能が上がるという話が浸透し、皆が行く前から楽しみにしているので前後の差が出なくなってしまったのだそうです。その時の患者さんたちの楽しそうな様子を思い浮かべるとこちらまで楽しくなる、いい話です。
数値ではっきり示せなければ科学的とは言えず、これでは論文は書けません。くだらないことをやっていないで、きちんとデータをとりなさいというのが今の科学の方向ですが、大事なのは患者さんがよくなることですよね。どなたかが、同じ笑いでも人をけなして笑うようなものは効果がないと話していらしたような気がします。宜なるかなです。
私の場合、結局は生命誌にもどり、それに関わることをあれこれ考えたり、やったりしているのが一番落ち着くという平凡な話です。