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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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ダンゴムシ物語

2014年2月28日

生命誌の話を聞いて下さった企業のトップの方が質問されました。「地方で育ったので、子どもの頃は虫やサカナ・・・生きものと一緒に暮らしていたけれど、孫たちがそういうものに無関心。生きものの本を買って渡しても無視されます。どうしたらよいのでしょう」。私は直接人間を研究しているわけではありませんから科学的な答はできません。そこで申し上げたのがダンゴムシです。“小さい時、なぜか子どもはダンゴムシに関心を持ちますでしょ。しかもダンゴムシってどこにもいるんです。その時大人がそれに気づいてダンゴムシをかわいがりポケットに入れるのを一緒に楽しむこと。これが別れ道だと思います。”実はこの答、ほとんどの方が“なるほど。そうですね。”とおっしゃいます。お出かけは車で目的地まで、道をのんびり歩くこともないという生活をしていては、ダンゴムシには出会えません。歩いてさえいれば、都会の真中でも出会えるのがダンゴムシとアリです。

こんな話をしてくれた方もありました。長い間家庭教師の仕事をしている方が、高層マンションで土から離れて暮らした子どもは将来伸びないと実感しているというのです。これも数字で示されたものではありませんが、なんとなくわかる気がします。

そして昨日です。滋賀県立膳所高校で、生徒さん達の“ダンゴムシが落ち葉を食べるのは?”という研究に出会いました。ダンゴムシの腸内には、シロアリやウシなどと同じようにセルロースを分解してくれる原生動物がいるとされていますが、これはたまたま落ち葉と共に原生動物を摂取した時にだけ起きているのだそうです。外から食べものを与えてみると、セルロースよりデンプン、スクロースなどの糖を好むので、ダンゴムシは糖分を摂っており、セルロースはあくまでも補助的というのが結論でした。今後糖分含有量の多い落ち葉を好んで食べるかという実験を続けるとのことです。

小さな頃のダンゴムシへの思いを科学に育てている若い人たちの研究に、思わず頬がゆるみました。ダンゴムシ。とても大事な存在かもしれません。

P. S. NHKのラジオ深夜便の「明日への言葉」のコーナーで、「いのちはつながりの中に」をテーマに話し、ダンゴムシを語ったのですが、カットされているかも。放送は3月8日(土)午前4:05〜4:45(NHKラジオ第一)です。

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