館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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小さな村の大きな挑戦
2013年9月17日
以前からここでも取りあげてきた小学校農業科を進めている喜多方へ行ってきました。熱塩小学校。5年生7人と6年生7人が一緒に勉強する複式学級で、農業科でのトウモロコシの収穫と国語の教科書に私が書いている「生きものはつながりの中に」の授業を楽しんできました。給食も一緒に食べて。一日で山ほどの体験をしましたので追い追い書いていくことにして今日はトウモロコシと給食です。
トウモロコシを生で食べるという体験なさったことありますか。私は初めてです。もぎってすぐ皮をむきその場でいただくと果物のようでほんのり甘い汁が口中に広がり、本当においしいのです。「私が皆と同じ年の頃には、お米がなくて代わりにトウモロコシやサツマイモを食べたのだけれど、その時のトウモロコシは火を通しても固かったし、こんなに甘くなかったのよ」とつい年寄りっぽい話をしてしまいました。良質の野菜の採れたてをいただく幸せを生活の基本に置きたいとつくづく思いました。
この学校の給食は、20年前から地元のものを使っておいしく食べる努力を積み重ねてきているのです。20年前、まずお米を地場の有機低農薬栽培の自主流通米にするところから始めるのですが、これが大変。給食で使用できるのは政府米というきまりがあり、そもそもそれ以外のことを考えるなどとんでもないとされてしまいます。ここから先の長いやりとりとそれを乗り越えていく地域の人々の努力の記録を読むと、子どもたちのためにという筋が一本通っていてなんとも気持がよいのです。「制度上できないことであっても、無理にも何とかやってこれたのは、保護者を始め沢山の関係者が、心を一つにして取り組んだ結果であって、当時の苦労は今、苦労ではなく快い喜びになっている」。歴史を綴った元教育長さんの文の最後です。小さな村でのすばらしい挑戦です。でも、もしかしたら小さな村だからこそできたのではないかとも思います。因みにお椀は会津塗りでした。