館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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【思いがけず立体マンダラに】
2013年3月15日
「ああ、この空間はマンダラですね。」最近、研究館にいらして下さった方がおっしゃった言葉です。三人が、しかもまったく独立に。ここでも書いていますように、このところ「生命誌マンダラ」を作ろうと皆であれこれ考えており、実は昨日(12日)プロトタイプを出したところです。でも、三人はそれ以前にいらした方ばかり。つまり、私たちがマンダラという形で生命誌を表現しようとしていることはまったく御存知ない中での発言でした。今までそのようにおっしゃった方はありませんでしたので、ちょっとふしぎな気持になっています。
実は、メンデルの論文は1865年に書かれたのですが、注目されることなく時が過ぎました。そして1900年、「ドイツ植物学会報告」に、ド・フリース、コレンス、チュルマックの三人が遺伝の法則に関する論文を出したのです。それまでの経緯はあれこれあるようですが、「メンデルの法則再発見」という有名な話です。研究は個人的なものですが、時代の流れがあることも事実です。
ふと思い出した例を引きましたが、私たちと来館して下さった方々との間にも、時代の流れを受け止める同じ気持ちがあったのではないかという気がするのです。複雑になっている世界ではマンダラのような考え方が大事、またはそのような考え方をしなければ新しい方向は見えないと思います。
空間をマンダラにするのは、まさに東寺で空海が見せてくれたことですし、高野山も全体がマンダラだと言われています。「生命誌マンダラ」はもう少し練らなければならない状況ですが、この考え方でいろいろなものを見てみようと思います。東日本大震災から二年。残念ながら深く考える社会への転換は望めない雰囲気です。小さなことしかできませんが、納得のいく仕事を続けようと思っています。