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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【タンポポオムライス】

2012年9月18日

中村桂子

子どもの頃から食べなれたオムライス。ケチャップ味の御飯と卵の組み合わせが子ども向きである一方、大人にもなつかしい味です。子どもたちが小さかった頃は、週末にスープの後にオムライス、そしてデザートにアイスクリームやフルーツで、ちょっと楽しい時になったものです。大人好みの手をかけたお料理より赤と黄色の色彩りもよく人気のメニューでした。

ところで、NHKの「山田洋次監督の選んだ日本の名作100本」という番組で、伊丹十三監督の「タンポポ」を見て驚きました。ホームレスのおじさんが、夜中にキッチンに入り込んで作るオムライス。フライパンを振りながら手際よく作ったチキンライスをお皿に盛ってから上にフワフワのプレーンオムレツをのせ、その真中にナイフを入れると両側に半熟の卵がトロリと開いていかにもおいしそうにでき上がりです。これまでオムライスはフライパンの中にある半熟卵焼きにライスをのせて包むものと思い込んでいたのでびっくりです。確かに日比谷松本楼のオムライスは好みのソースの方に眼がいっていたけれど、あれもフワフワだったなと思いながら、でもちょっと違うなどと、しばしオムライスの考察が続きました。最近はこういう時すぐネットで調べられるのがいいですね。タンポポのオムライスは伊丹十三の発明で、今では「タンポポオムライス(伊丹十三風)」と名づけられて日本橋「たいめいけん」の名物になっているとありました。やっぱり特別だったんです。でも見るからにおいしそう。もっと早く映画を見ればよかったのに、残念なことをしました。今週末に絶対作ろうときめています。

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