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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【素朴に考えます】

2010.8.17 

信濃毎日新聞8/2
信濃毎日新聞8月2日より
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中村桂子館長
 これを書いているのが8月6日、セミの声が頭上から降り注ぎ、強い日差しが容赦なく照りつけています。65年前のこの日の広島の空も抜けるように青かったとのこと。どんなに猛暑でも爆弾の心配をしないですむ幸せを思います。それに明るいニュースのない中で、昨年から今年にかけての核廃絶への動きは希望を感じさせてくれる嬉しいものです。その気持を新聞コラムに書きましたので、ここに流用させていただきます。

 8月15日夜NHKスペシャルで放送される「15歳の志願兵」は大沢省三先生のクラスメートの筆になるもの・・・ということはまさに大沢先生は当事者であることを先生からのメールで知り驚いています。先生は合格なさったのになぜか召集されなかった(たった二人だそうです)ので今があるのだけれど、仲間の多くは特攻隊員となり、若い命を失なったと書いて下さいました。BRHでのオサムシ研究をリードして下さった研究者としての大沢先生しか知らなかったので本当に驚きました。こんなことはもうあってはいけないと先生のメールにありました。原爆の被爆者も、やっと最近になって体験を語り始めた人が少なくないと聞きます。語りたくないというお気持はよく理解できますけれど、体験でしかわからないことばかりです。どんな理屈をつけたって戦争は正当化できない愚かなことだというメッセージは大切です。私は第二次大戦の始まった時は幼稚園、終ったのが小学校四年生なので、本当の意味での「戦争」を体験しているとは言えない世代ですが、でも心や体に沁み込んだものがあります。
 原子爆弾やクラスター爆弾など先端技術が作り出したものを用いる時代だからこそ素朴に考えたいと思っています。



 【中村桂子】


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