館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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【席を譲られて】
2009.2.16
年齢って、誰もが毎年重ねていくもので、特別なことではありませんが、それをどう受けとめるかは難しいところがありますね。還暦とはよく言ったもので、そのあたりからの生き方が問題です。仕事の進みが遅くなったなあと落ち込む日があるかと思うと、思いがけずとんとんと進んで新しいことを思いついたりしてまだ捨てたもんじゃないと嬉しくなる日もあるというのが最近の日常です。わきまえながら、でも前向きに、まあできることをきちんとやるしかないという居直りも時には許してもらい・・・。それにしても自然体で暮らすことが許されているのは本当にありがたいことです。まわりになるべく迷惑をかけないように(かけっぱなしでしょうという声も聞こえてきますが)、まわりの親切は素直に受けとめてと、電車で行き合った若者を思い出しながら思っています。 ところで、人間の年齢のことを考えていたら、面白い詩が眼にとまりました。詩人のアーサー・ビナードさんが紹介しているニューヨーク生まれの詩人レイチェル・フィールドの作品です。 摩天楼 摩天楼たちは疲れないかしら? いつまでも あんなにしゃんと背をのばしていなきゃならないなんて。 ぶるぶる震えたりはしないのかしら? 冷え込んだ夜 帽子もかぶらないで、寒空に頭がそのままふれている。 たまにさびしくなるかしら? あまりにも高くそびえ立っているから。 ゆっくり横になりたいと思うのかしら? 二度と起きないで、そのままでいたいって。 ニューヨークのエンパイアステートビルは1931年竣工とありますから私より少し年上。確かにそろそろ横になりたいんじゃないかなとも思います。でもビナードさんは東京汐留の超高層ビルもなんだか疲れているように見えると書いていらっしゃいます。私もそう思います。高層ビルばかり作ってきた人間も疲れてしまっているような気がしますし。若くて疲れてしまう時代だとするとまずいですね。 【中村桂子】 ※「ちょっと一言」へのご希望や意見等は、こちらまでお寄せ下さい。 |