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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【ていねいに生きていらっしゃる方たち】

2008.12.1 

中村桂子館長
 加古里子さんが「加古総合研究所」を始められてから30年。そこでお仕事の一つとして、「伝承遊び考 4巻」という日本の子どもたちの遊びを集めた大きな本を完成されました。この二つをお祝いする会が開かれ、私もお招きいただきました。嬉しいことにお招きをいただいた後に菊池寛賞の受賞もきまり、本当におめでたい会でした。今年82歳。東大工学部出身、昭和電工に入社なさいましたが、学生時代セツルメントでやっていらした子ども会活動を生かし、絵本作家になったという、ちょっと異色の経歴の持ち主です。
 我が家でも、子どもたちが、「だるまちゃんとてんぐちゃん」などだるまちゃんシリーズを楽しみました。科学読み物「かわ」「たいふう」なども、まだ今のように科学、科学と騒がれていない頃に、じっくり作られたていねいな解説の楽しい本でした。実は、加古さんは、生命誌研究館にとても関心を持って下さっています。「総合研究所」をつくりはしたけれど総合とは何かがそれほど明確でなかった。そこで、生命誌の考え方を知って、同じことを考えていると思い整理ができたと言って下さいました。子どもに対して真摯な態度でていねいなお仕事をなさってきた方にそう言っていただいてともて嬉しかったことを思い出します。世の中がどんどん雑になっているような気がします。加古さんのような方と時々お会いして、ていねいに暮らすことの大切さを思い出すのはとても大事なことです。
 加古さんの会で、同じテーブルに思いがけない方がいらっしゃいました。作家の加賀乙彦さんと美術史がご専門の辻惟雄さんです。加賀さんは以前からいろいろお教えをいただいていますし、辻さんの「日本美術の歴史」(東大出版会)は門外漢にも美術史の面白さがよくわかり、楽しく読みました。お二人とも若い頃のセツルメント活動の仲間だったとのこと。加賀さんは、「セツルメントに加古里子(さとこ)さんという人がいると聞いて、どんなお嬢さんかと楽しみにして会ってみたら・・・」と皆を笑わせました。加古さんは、大柄でゴツイ方なのです。貧しい子どもたちのための子ども会活動をした仲間が年を取ってから思い出を語り合う場面はとてもすてきでした。

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2008年8月1日 ちょっと一言
【たくましく、美しく、すこやかに−いえ、“より”が必要です】

 【中村桂子】


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