館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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【緑や川への気持】
2008.10.31
今暮らしている世田谷は、幸い、東京の中では緑が多い方ですが、それでも、近所で相続の起こる度に、大きな樹が伐られてしまいます。土地にとんでもない値段がついているためにこういうことが起きるのですから、共産主義者ではありませんが、土地にはもっと公共性を持たせてもよいのではないかしらと思います。よその国の制度はよく知りませんがヨーロッパなどはそうなっているとも聞きました。土地は自然の恵み、誰が作ったものでもないのですから。そんな気持で、世田谷トラストのメンバーになり、緑を大事にする活動のお手伝いをしています(と言っても、本当にできる範囲のことですが)。 昨日は、「身近な環境について考える子どもと若者の提案コンクール」の公開審査を依頼され行ってきました。子どもたちが身のまわりで見つけたものを絵に描いたり、写真に撮ったり。どの作品も素晴らしくて楽しみました。 小学校4年生の男の子。「家の近くの県道は昔は川で、水車があったそうです。歩いてみて橋がいっぱいあってびっくりしました。今も川だったらよかったのにと思いました・・・」私もそう思います。都市化は川をつぶすことでした。数寄屋橋は「君の名は」の頃は本当の橋でしたが今は面影もありません。人間は川のある所に暮らしてきたのに、身近な川が暗渠になっています(“春の小川”の歌の小川である渋谷川も今は暗渠。今小川をとり戻そうという動きがあるようですが、特別なところだけでなく、街全体としての川を考えたいですね)。 けやきに眼をとめた小学校4年生の女の子。「こんなに大きなけやきを見たのは初めてで70才も生きている。「すごい」の一言です。太くて、たくましくてまるでお父さんのようです。まるでわたしたちを守ってくれているようです。わたしもけやきを見守っていきます。」 これも小学校4年生の男の子。「みんなで、自転車や車でまわって世田谷百景の写真をとりました。雨の日もあればカラカラに晴れている日もありました。でもみんなで回ったら楽しくなってきました。・・・」みんなというのはお父さん、お母さん、弟です。家族みんな、とくにお父さんがずっとつき合ってくれたのがすてきですね。 こんな風に見ていくと、子どもの自然への気持はとてもすなおで、私たちが子どもの頃と同じだなあと思います。そしてその気持を表現すると他の人にも同じ気持が伝わっていくのですから、子どものまわりに自然があることの大切さを改めて思いました。 【中村桂子】 ※「ちょっと一言」へのご希望や意見等は、こちらまでお寄せ下さい。 |