館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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【普通に暮らしたい − 石弘之さんの発言を支持】
2008.10.15
その石さん。経済成長を追い続けてきた結果がこれなのだし、その中で更に成長を求め、国民の所得格差は広がっていくような社会を望ましいとは思わなかったのでしょう。ある研究会で「過労死や自殺者を増やさないためにも、普通の国でいいんじゃないか。あくせくするのをやめようよ」と発言なさったのだそうです。すると若い研究者から、国と地方の債務残高が755兆(2008.7)、一世帯あたり1650万円、毎日160億ずつ膨らんでいるので、普通の国になったら財政破綻すると批判が集中したのだそうです。私は、お金のことはまったくわからないのですが、毎日160億ずつ借金が膨らむ状態だから、このままでしか行かれないというのは、なんだかおかしいと思うのです。石さんの普通の国という言葉にこめた意味の一つに“食べものは自分で作ろう”ということがありました。自給率が調べられている173カ国地域のうち日本は135番目という数字をあげて、自給率をあげる方向で考え、農業を活発にし、地方を活性化したら、自殺者は減る方向になると思うという考え方です。私もその通りだと思います。債務がどうあろうと、自分たちの食べものは自分で作ろうという決心をしてそれを始める方がよいだろうと思います。眼の前の債務だけに眼を向けて他の生き方に眼を向けられないでいる人たちが、普通の人が普通の暮らしを求めているのを否定するのはおかしいし、そういう人が動かす社会は嫌いです。お金の額(数字)から始まるのではなく一人一人の暮らしから発想すれば答は見えるのに。なぜそれができないのかなと思うのです。 【中村桂子】 ※「ちょっと一言」へのご希望や意見等は、こちらまでお寄せ下さい。 |