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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【美しくないことはしない-更には美しいことを積極的に-】

2006.1.5 

中村桂子館長
 新年おめでとうございます。ついでに私事を言わせていただきますと、1月1日は私の誕生日です。子どもの頃は、これがちょっと残念でした。他の兄弟は、特別に“お誕生日おめでとう”があるのに、私だけごまかされているみたいで。この年齢になりますと、記憶力が衰えても、これなら忘れないだろうとよい方に考えています。一年の始めには昨年のことを省みて、今年こそはと心を新たにする・・・・年の終りには反省の塊になることはわかっていても、“それを言っちゃあおしまいよ”です。
 ところで、年末には、その年を象徴する漢字、新語、流行語、創作四字熟語、川柳など、言葉が話題になります。去年は魅力的な言葉がなく、熱が入らなかったようで、あまり大きな反応はないままに終わりましたが、暮れも押しつまって、とても魅力的な言葉を聞きました。残念ながら話していらっしゃる場面をテレビで見なかったので、正確ではないかもしれませんが、“美しくない”という言葉です。株式の売買に関連して法律や商ルールには反しないかもしれないけれど気持がよくないと多くの人が思っていた行為についての与謝野馨金融・経済財政担当相の発言として紹介されていました。“美しくないことはしないようにしよう”。皆がこういう気持になったら、暮らしやすくなるかなと思いました。道の歩き方、電車の乗り方など日常の行動で、道徳とか倫理というのも大げさですし、だからといって具体的に人に迷惑をかけなければ何をやってもよいとしてしまうのは気になります。電車の中でのお化粧は、私のように何をどうしたらよいか知らない人はただただ見ているうちに感心して降りる駅に着いてしまうというのが実情ですが、やはり“美しくない”の中に入ります(こう書きながら美しくないと思わない人が増えているのかもしれないと気づき、少し考えこみますが)。それでも面倒な規則に縛られるより、あれこれ制度を作って行動を云々するより、“美しくないことはしないようにしよう”という判断基準の方が気持がよいです。今年が“美しい”年であるようにと願いながら、仕事を始めます。今年もよろしくお願いします。

 
 
 【中村桂子】


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