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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【長いしっぽ。いいですね。】

2005.6.15 

中村桂子館長
 しっぽ。なぜか私たち人間はこれを失ってしまいましたが、本当は、あったら面白かったのにと思いませんか。ワンちゃんでも、キャンキャン吠えていても、後でしっぽがヒラヒラしていれば安心。顔や声より、しっぽの方が信用できます。時々、しっぽで気持が表現できたら面白いだろうなと想像します。それに、電車の中で本を読む時はしっぽで吊革につかまっているなんて便利じゃありませんか。ところで話は、ワンちゃんのしっぽではありません。「長いしっぽ」という興味深い単語を眼にしたので、ちょっと考えてみました。これはマーケティング用語だそうです。この図はものの売れ方の様子を表しています。
 とても人気があるものはそれほど多いわけではなく、そうではないものがいろいろあるということを示しています。長いしっぽです。人気商品は全体の20%、それが売り上げの80%を占めるというのがマーケティングでの常識とされてきたのだそうです。私が見たのは本について考察されたものでした。いわゆるベストセラーが少数あり、数千部というような本がたくさんあるというわけです。そして、後者はすぐ絶版にされ消えていくわけです。とても気に入って是非読みたいという人がいて、仲間に紹介しても、その時には消えていることが少なくないのです。これは、私自身の著書も含めて、実感しているところなので、まったくその通りと思いました。ところがアマゾン・コム(インターネット書店)の場合、販売部数で見ると4万位から230万位(なんとたくさんの本があることかと驚きです)までの本の売り上げの総和が全体の半分を超えているというのです。半分以上とはすごいですね。しっぽが活躍しているのです。こうなったら本の寿命が長くなるのでしょうか。そうだとよいのですが。いずれにしても、とてもよい傾向だと思いませんか。本に限らず大きな塊で動くより、いろいろな考えや好みがあり、一人一人が自分の考えで動く社会の方が面白くて安心できると思うのです。今地方に元気なところが出てきていますし、世の中少しづつ変わっているのかなあと思います。
 “長いしっぽ”という表現も気に入っています。長い長いしっぽがいかにも楽しそうに振られているみたいで。しっぽ頑張れぇー。

 
 
 【中村桂子】


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