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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【辛いだけで意味がない】

2004.2.15 

中村桂子館長
 スポーツ観戦も、選手との年齢が離れてくると、誰かに入れ込むということがなくなり、どんなによいゲームでも、それだけではちょっと物足りなくて、あまり熱心に見なくなってしまいました。女子のテニスで言えば、クリス・エバートとマルティナ・ナブラチロワの頃が最も熱心に見ていたかなと思います。コートの上でも優雅なエバートとちょっと男性っぽさを感じさせる天才的なナブラチロワと・・・どちらも魅力的でした。
 先日の東レ パン・パシフィック・テニスではナブラチロワがダブルスで出場したとか。実戦は見に行けないので、テレビ放映を楽しみにしていたのですが、残念ながらありませんでした。なんでも今流行のものばかりでなく、往年の名選手のプレーを見せるというセンスがあってもよいのにと思うのですが。そう思いながら新聞を見ていたら、日本のプレイヤーへのアドバイスを求められたナブラチロワの答が載っていました。「やっていることを愛すること。そしてベストを尽くすこと。ただ勝とうとしたりランキングを上げようとしていては辛いだけで意味がない。とてもシンプルなことだ。」なんでもないことのようですがさすがだと思いました。特別のことを言っているわけではありませんが、でも一流の人の言葉です。
 これはテニスに限ったことではありません。研究にも教育にもあてはまります。愛してベストを尽くす。これに尽きます。ところが最近は、勝つこと、ランキングをあげることが目的のように言われるようになってきました。子どもたちにも、このような気持ちで接しなければいけないのに「辛いだけで意味がない」と思わせるような方向へ持って行っていることが多いような気がします。
 ナブラチロワのコート上の姿を見られなかったのは残念でしたが、よい言葉を残してくれてありがとうと思っています。


【中村桂子】


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