館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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【ペシミスティック・オプティミズム】
2003.1.15
「生命」について考えている者として今年は早々に面倒な課題をつきつけられています。一つは“生物兵器”(テロに使われることも含めて)、もう一つは“人間のクローン”です。どちらも、私がこの分野に入った頃から話題になっていましたが、なんとなく「いくらなんでもそれはなかろう」と意識の奥の方にしまいこんできました。 物理学での素晴らしい成果を核兵器につなげてしまった時、アインシュタインを初めとして湯川秀樹先生を含む多くの物理学者は悩み、考え、行動をしました。物理学と生物学の違いもありますし、多くの生物研究者は恐らく私と同じように、「いくらなんでもそれはなかろう」と思ってきたと思いますので、あれこれ複雑な思いで事態を受け止めているところだろうと思います。 お正月早々悩ましいところへ入りこんでしまい、すぐに答えの出せることでもありませんが、「生命」「生きもの」を基本にして、どう考えていくか。「生命誌」としては大事な事です。 【中村桂子】 ※「ちょっと一言」へのご希望や意見等は、こちらまでお寄せ下さい。 |